生前。
物部一族と蘇我一族は宗教戦争に陥っていた。
仏教と神道。
どっちを信仰するかだ。
物部の一族のリーダーは物部守矢だ。
布都は、どっちもそれほど好きではなかった。
どちらかと言うと、生前の神子が信仰している道教が好きだった。
「そうだ!こんなくだらない争いをしてんだったら私が終止符をうってあげよう!!」
そう考えた布都は、蘇我一族と裏でつながり、物部一族を壊滅に追いやった。
そのうちに、後を追うように蘇我一族も滅びた。
しかし、まさか物部一族が滅びるとは思っていなかった布都は、己の過ちを悔やんだ。
「こんな事になるとは思ってなかったのよ・・・!!私が・・・、私が悪い・・・!!」
そんな時だった。
「布都。」
神子が布都を尸解仙にならないかと誘ったのだった。
その時、布都は考えたのだ。
蘇我一族に屠自古がいたな。と
屠自古を殺せば自分の罪は軽くなる。そう考えた布都は
屠自古に尸解仙にならないか?と誘ったのだった。
屠自古は、いきなりの誘いに少し怪しんで考え込んだがすぐに二つ返事をしてくれた。
布都は、尸解仙のなり方を屠自古に教えた。
屠自古は、自分の依り代となる物として壺を選んだ。
そして、屠自古はこの後亡霊になることを知らずに眠りについたのだった。
布都は、屠自古が眠りについたのを確認すると
こっそり焼かれていない(時が経つと朽ちてしまう)壺に変えた。
そして、いよいよ屠自古が目覚める日
屠自古は壺に乗り移ろうとしたが、壺は朽ちて崩れてしまった。
こうして、布都は二度殺人をした事になる。
「や、やめてっ・・・!!」
「あっはっはっはっは!!そう、その顔よ布都!その調子!あー、お腹が痛いわあ!!」
「神子さんッッ!!」
「ふう・・・。神子も変な事しよるのお。」
すると、突然布都はその場に倒れ込んだ。
「布都!!」
廟の中は、神子の笑い声が響き渡った・・・
「布都!!」
「た・・・太子様、どうして・・・?」
うおあああああ!?
布都が神子に斬られたああああああ!?(布都斬りてえ・・・)
布都は、神子の不意打ちに腕をやられた。
「チッ・・・かすりましたか。」
「チッ、じゃないわよ!!神子さん、一体どういう事!?」
一輪が神子に問いただすと、神子は突然笑い出した。
「ふ、ふふふ・・・・ははは・・・・ふははははははははは!!」
「な、なによ・・・!?」
「太子様・・・?」
神子は、目の前にいた一輪を斬りつけた。
それにいち早く気づいたのか雲山が一輪を守った。
「あら、御仁じゃありませんか。どうなさったんですかあ・・・?」
神子はよろめきながら剣を構える。
雲山は一輪を守ると蒸発した。
「雲山ッッッ!!」
「ふはは・・・。いいですね、その顔。今度文さんに撮ってもらおうかしら。」
「何をお考えなのですかッッッ!!太子様ッッッ!!」
布都が大声で叫んだ。
するとまた、神子は薄気味悪い笑みを浮かべながら言った。
「何って・・・?私の元に長年仕えていた貴方なら分かるはずですよお・・・?」
「分かりません!!我を斬るだけならまだしも、一輪は何もしてないじゃないですか!!」
布都は、一輪の近くに駆け寄った。
「一輪、大丈夫か!?」
「布都!!後ろ!!」
布都が振り返ったが、もう遅かった。
神子は布都を斬りつけると、また後ろに飛びのいた。
「太子様ッッッ!!」
「あはははは!!何て顔してるんですか、布都。まあ、その顔好きですがねえ・・・?」
神子が布都に近寄る。
「来ないでください!!今の太子様は完全に正気をなくしておられます!!」
「やだあ・・・。布都、そんな事も言うようになったのねえ・・・。」
すると、神子はまた布都を斬りつけた。
布都からは大量の血飛沫が花弁のように飛び散った。
「た・・・い・・・し様・・・」
「ふふふ・・・あはは・・・あっはっはっはっはっはっは!!!」
「悪い奴だ。ありゃもう二度と治らんな。倒さない限りは。」
「ちょっとマミさん!!黙って見てないで助けてあげてよ!!」
「うん?でも、布都に加勢しようとしたら・・・」
マミゾウは周りの炎の壁を指さした。
「これは・・・?」
「加勢してほしくないんだろうな。自分の主は自分が治す・・・。」
それから、布都は傷が見ていられないほど増えていった。
神子は布都の身体が傷ついていくのを笑って斬りつけていた。
「た・・・太子様・・・」
「布都ぉ・・・?昔の人はこうしたわ・・・主に逆らったものは切腹を・・・。」
「・・・っ!」
「貴方は今、私に逆らおうとしている・・・。それは、即ち自分の死を意味するのよ・・・?」
また神子が声をあげて笑った。
「太子様・・・太子様がお考えになされた憲法・・・覚えておりますか?」
「ああ・・・十七条の憲法ね。それがどうかしたの・・・?」
「一に曰く、和を以て貴しと為す・・・」
「あら。」
「太子様、人との和を大切にしなさいと教えてくれましたよね?逆らっても心の広い太子様なら許してくれますよね・・・?」
布都はもう身体がボロボロで、声もあげれないほどズタズタにやられた。
が、神子に言いたいが一心に力を振り絞って言った。
「太子様ッッッッッ!!」
それを聞いて神子の顔から笑顔が消えた。
「布都・・・ふざけるのも大概にしろ。」
「ふざけてなどおりませぬ!!」
「そうか・・・。っふ。頭のない奴にはふざけている事も分からんだろうなあ・・・」
「太子様の方がよっぽどどうかしておりまする!!」
「ふふふ・・・。そうかそうか。」
神子は腰からまた剣を取り出すと、布都に振りかざした。
布都は黙ってその場に立っていた。
その時だった。
「!?」
いきなり布都は神子に抱かれたのだ。
「た・・・太子様?」
「ごめんね・・・。そうよね、私がどうかしてたわ・・・。布都の言う通りよ。」
「太子様・・・!」
「そうね・・・早く死んでもらわないと・・・」
そう言うと、神子は思い切り布都の心臓辺りに剣を突き刺した。
「がはっ・・・・!」
「布都!!」
「危ないぞい。焼き一輪になるつもりか。」
「でも!!」
「ほれみろ。」
マミゾウが布都の方向を指さすと、布都は笑って剣に手を添えた。
「やっと・・・解ってくれたんですね・・・嬉しいです・・・」
「布都!!幻覚よ!!幻聴よ!!聴いたり見たりしちゃだめっっ!!!」
「ごめんねえ・・・布都・・・」
神子は笑いながら剣をさらに深くに刺した。
「うっ・・・!」
「布都・・・・!!」
一輪はその場に崩れた。
マミゾウは黙って見ている。
もはや、どうすることも出来ないのだろうか。
「太子様・・・一つ勘違いしておられることが・・・・」
「ん・・・?何?布都の言う事は何でも聞いてあげる・・・」
「そうですか・・・?じゃあ。」
「私が尸解仙なのは知っておりますよね・・・?」
「ええ、そうね・・・」
「なら、死なないことも分かっておられるはず・・・!」
そう言うと、布都は近くにあった自分の皿に魂を乗り移らせた。
「この通り、私は時が止まっている皿にならば依り代にして乗り移ることが可能です。なので死にません。」
「うそっ・・・・!?」
「嘘じゃあありませんよ・・・!さあ!反撃だ!!一輪、マミゾウ!!」
「やれやれ、やっと出番かいな。」
「布都!!傷は大丈夫なのっっ!?」
一輪とマミゾウは炎の壁から出される。
その様子を神子が黙って見ている訳がない。
「あらあら・・・今度は友情ごっこですか。幻想郷に来てからというもの、布都は変わりましたね。」
「はい!!」
すると、神子は思い出したかのようにある言葉を口にした。
「自分の一族を見殺しにした罪は償ったんですね」
「それはっ・・・!!」
「あああああああああああ!!!」
布都はその場で叫んだ。
「どうしたんじゃ。騒々しい。」
「今思えば、太子様を復活させれる方法を思いついたような気がするぞ!!」
「何じゃ?」
「青娥殿に頼めばよいのだ!!」
霍 青娥。
宮古芳香というキョンシーを従えている仙人(邪仙)。
このキョンシーは、死体を復活させた者。(知っていると思うが)
と、すれば・・・!
「・・・成る程な。青娥に頼めば神子は助かると。」
「そういう事だ!!早速青娥殿の元に向かうぞ!!」
「あーっ、あー・・・いや向かわなくてもいい。二つの理由でな。」
「ん?」
布都は、マミゾウの言葉に足を止めた。
「一つ目の理由は・・・青娥は今旅行中だとか。」
「旅行中!?どういう事だ!!」
「芳香をずっと戦わせていたから休ませてやりたいんだと。」
「な、成る程・・・二つ目は?」
「二つ目は・・・」
神子は死んでいないからだ。
「へ・・・?」
「だーかーらー、神子は死んでおらんと言うておろうが。聞こえんのか?」
「そう言う事では無い!!太子様は死んでいると言っておったろ!お主が!!」
「いや・・・、あまりにも神子を死なせたことを悔やんでいる姿が笑えてな。暫くは本当のことを言わないでおこうと思っておったのじゃ。」
「それを早く言わないか!!さっきまでの修行がすべて水の泡ではないか!!」
「いや、そうでもないぞ?」
マミゾウは、布都の手を指さした。
布都は、手の中を見ると、欠片が二つ握られていた。
「む・・・!これは!」
「欠片じゃ。これで四つじゃのう。」
「これは忍耐力と・・・?」
「力じゃ。いわゆる攻撃が上がったという事じゃ。」
「あ?」
「その欠片集めも、あながち無駄ではないと思うぞ・・・?」
「どういう事だ・・・?」
「おーい!布都ー!!」
「一輪ではないか!!」
「神子さんは生きてたよ!!封印を解く術も分かった!!」
「何だと!?それは本当か!」
「今、丁度下準備が終わったところだから!!後は、六つの欠片が必要みたいなんだけど・・・私は一個しか持ってないんだ。」
「む、そういう事なら、私が四つ持っているぞ。しかし、四つでも五つだな・・・」
「ふっふっふ。神子を本当に助けたいのか?」
「そりゃ・・・!」
「なら、任せろ。儂が何とかしてやるぞい。」
「本当か!?」
「実はと言うと、儂は欠片を一つ持っていてな。これで一つじゃ。」
と言うと、マミゾウは尻尾から欠片を取り出した。
「うわあ・・・!」
「やるじゃないか!狸のくせに!!」
「くせには余計じゃ。ほれ、早く助けに行くぞ。」
「太子様~!!」
「こら、布都!!ちゃんとノックして開けないと!!」
「ふむ・・・、実に厚い扉じゃなあ」
布都達は神子が封印されている廟に来た。
病の中からは相変わらず神聖な気配が流れている。
「太子様!今助け出してあげましょうぞ!!」
布都は欠片を一輪とマミゾウから借りると穴にはめ込んだ。
すると、廟が動き出した。
「うわっ!!」
「布都!離れてなさい!!」
「本当に凄いのぉ・・・命蓮寺。」
廟は音をたてて中にいる人を引っ張り出した。
「太子様!!」
布都が慌てて駆け寄る。
その時だった。
「布都!!」
「布都!!」
「た・・・太子様、どうして・・・?」