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【コンセプト】
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久しぶりに長文を。
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世界中に無数にある自転車屋には、各々様々なコンセプトで店を運営していると思う。
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好きな事を仕事にして大して金儲けできなくても楽しんでいる店もあれば、金を稼げれば人真似だろうとポリシーが無かろうがお構いなしみたいな店もあるだろう、そのどれもが不正解ではなくまた正解でも無い。
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自転車という乗り物を如何にして昇華しようか?そんな事を考えながらこの店を立ち上げた自分はまずコンセプトありきで店名にもそのように記した。
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コンセプト。
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それなら俺の店のコンセプトってなんだろう?
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世界中に無数にある自転車屋の中できっと一番小さい存在だと思う。
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人口も少ない、土地柄的に首都圏から離れている、住んでいる家のガレージで始めたこの店。
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話は少し逸れるが、幼い頃から鍵っ子だった自分は、家に帰れば当然誰も居ない暗い部屋の灯りを点けて誰も居ないのに「ただいま」と部屋に入り、誰も居ないその部屋で決して手の届かない夢のような乗り物の絵を描き続けていた。
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10年前に生まれ故郷、東京を離れ、ここ香川県へ来た、誰も知らない、誰も俺の事など知らない街へ。
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38歳の俺に最後の冒険の始まり。
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上の子は小学3年生、下の子はまだ4歳であり、家のガレージを自分で改装するところから始めて、学校から帰ってくる娘を迎えたり、息子を幼稚園まで迎えに行ったりする日々が始まった。
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朝から夕方までアルバイトに出掛けて、子供達を迎え入れたら…誰も来ない店を開ける。
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自転車という乗り物に密に触れるようになって沢山の事を覚え、学び、足りない知識や技術を吸収していく毎日、決してお客さんは来る事は無かったから自分で用意した様々な自転車を分解しては色を塗り、組み立てては走らせての繰り返し。
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そんなこんなで、段々とこの街の方々に認知されるようになり、同時に子供達の事も覚えてくれるようになった頃、憧れの自転車ブランドを扱えるチャンスがやってきた。
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そしてこの街に永らく存在しなかったそのブランドがこの町から一旦取り扱い店が無くなった経緯も知ることになる。
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その土地土地で盛り上がりを見せる自転車の種類というものがあるのだと改めて思い知らされた。
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それでも自分が憧れた自転車ブランドを皆んなに知ってもらいたいと願い続けた。
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娘が15歳になる頃に、SURLYをプレゼントしようと思い立った。
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その頃にはだいぶ俺の店は嬉しい事に香川県だけでなく、各県でも認知されるようになりカスタムペイントを始め、まずはお客様がどのような自転車に乗りたいか?色は?どんな風に使う?そんな事を徹底的に考えながら自転車を提供してきた。
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その頃には車名やサインは定着していた。
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さぁ、ここで話を最初の方に戻そう。
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俺の店のコンセプトは?
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既に5年ほど経ったこの店のコンセプトを決定付けたのは何を隠そう娘の自転車の車名だった。
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東京に居た頃は子供達のためと思いながら朝から晩まで、いや帰ってこれない日もちょいちょいあるようなサラリーマンの日々…
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子供達と遊んでいたという記憶は子供達にもほとんど無いくらいだと後から聞くほどに皆無だった。
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雑音の入らないこの町で自由に好きなように好きな事をすると決めた俺がまずは自宅で仕事しながら子供達を迎えられる事、そして仕事場が風通し良く見える事。
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自分がされて嫌だった事は決して誰かにしてはいけない。
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身勝手な母親を持った天涯孤独になった男の子はそう思った。
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金儲けする事は悪い事では無いし、むしろ金さえあれば何とかなるなんて大人だから知っている。
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ただ、自分の好きな事を仕事にして、子供達に、そして同じようにお客様や自分自身に向けてコンセプトを立てようと思えばこそ…
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300台くらい作ってきた自転車の車名の中で一番短くて一番想いを込めた車名から自分自身の店のコンセプトは見えてきた。
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【LOVE】
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俺の作った自転車達の車名の中で最も短い車名にして最も大切な言葉。
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店のコンセプトに沿っていったのではなく、自分自身のことを俯瞰で眺めた時に始めて気付いた。
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ずっと自分に欠けて飢えていたものが、見つかった。
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それなら。
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簡単な話。
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自分の仕事に愛情を持って接する事。
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それ以外に俺の店の意味は無い。
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段々と飯が食えるようになってきた頃、自分の店の特徴ってなんだろう?
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ふと想えば…
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自慢はいつでも【お客様】だった。
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10人10色。
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皆様の色とりどりの自転車を作らせてもらう事。
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大きくなって毎日仕事に乗っていくとメンテナンスを始めたこの自転車を眺めながら。
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正解か不正解かはいつまでも分からないと思うが、それで良いと思う。
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自転車を作ってくれたお客様達が大切にそして安全に永く楽しんでくれるような。
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そんな自転車造りを。
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この自転車を眺めては思い出します。
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そんなに高い部品を使うのではなく、質実剛健に相応しい部品選び、本人の希望の色、そして何よりも楽しめる事。
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そのようなコンセプトで組んだこの一台。
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