【回想日記】2018年6月7日 思い出は最高の財産です【最終回】 | 回想日記~リメイク~

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数年前の記憶を、SNSや手帳などのアイテムを利用して想起し、日記にしてしまおうという試み。非社会的組織『煮卵』オフィシャルブログ。
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運命の最終面接を終え、いよいよ翌朝を迎えた。

一応就寝中にお祈りメールが届いていないかチェックする程度には神経質になっていた。

時間が経つにつれて不安になる。

私の感覚では、最終面接で内々定を獲得する場合は面接当日に連絡が来てもおかしくないと思うからだ。

不安感は徐々に増していくが、この日も第一志望のグループ会社の別会社の面接を控えていたため、身支度を始めた。

 

この日のテーマは「気持ちの切り替え」である。

当然だが、他の企業の面接の結果を気にしながら面接に臨めるほど器用なタイプではない。

一度そのことは忘れて、面接に挑まねばならない。

そのために必要なことは、「ルーティンを崩さない」ことであろう。

となると、準備を終えた私が当然のように向かったのは「はなまるうどん」である。

はなまるうどんさえ食べておけば大丈夫、そんな風にも思えたので、私にとってのはなまるうどんは精神安定剤である。

 

電車に乗り込む頃にはいつも通りの精神状態を取り戻していた。

むしろ、昨日の緊張を経験した分楽だったかもしれない。

これなら大丈夫だと、乗り換えを決行したときに、私のスマートフォンが震える。

 

昨日の第一志望の会社からの着信であった。

 

この着信に気付いた瞬間、私の脳内にはやばい物質が溢れ出していた。

これで終わったと直感では感じつつ、しかしその直感を疑う気持ちで手も震え出した。

駅のホームの比較的静かな場所に移動して電話に出た。

電話の発信主は昨日の面接を社長と共に担当していた取締役であった。

 

「あぁ、和田くん。こんにちは。昨日はお疲れさまでした。いま出先?ちょっと時間良いかな?」

当然、時間は大丈夫ですと伝える。

「まあ何となく察しているかも知れないけど、昨日の最終面接の結果の連絡です。」

それ以外に何があるんだとは思いながら、やっぱりそうか、と最大級の緊張が訪れた。心臓の音が聞こえる。

「いろいろ上の方で話した結果、君にはウチに来てほしいと思ってるんだ」

この瞬間、私の脳はパニック状態に陥った。その結果、

「ありがとうございます!え?ウチに来るっていうのは…今からですか?ちょうど向かっていました」

と謎の返答。そう、この日私が向かっていた面接会場も昨日と同じ場所である。

取締役は笑いながら、明らかに取り乱している私に優しくこう伝えた。

「いやいや、今日は来なくても良いよ。まあ分かりやすく言うと内々定です。」

この瞬間、初めて私は確信した。ああ、夢が叶ったのだと。

感謝を伝え、当然御社に入社します、と意思を伝えた。

人事はありがとう、と言い、こう続けた。

「ちなみに和田さんの内々定の決め手なんだけどね、実は序盤からほぼ採用する方向で決まっていたんだ。というのも、筆記試験(SPI)の結果と質問会での評価が最高でね。ああ、質問会は採用には関係ないんだけど」

この理由は意外だった。SPIがこれほど重視されていたとは。

あれも正直、実際の能力というよりは慣れで得た点数だとは思う。

それでやっぱり質問会は選考に関係あるじゃないか。

続けて、少し声のトーンが落ちて人事が尋ねる。

「ちなみに…この後の就職活動はどうする?」

私はこの会社に入りたくて場数をこなしてきた。当然内々定をもらった企業には申し訳ないが、辞退させていただく。

そして今日の面接以降のスケジュールは全てキャンセルする旨を伝えた。

人事も安心したように

「ああ、良かった。それじゃあ、これから長い付き合いになるけどよろしくね。」

と告げて、更にこう続けた。

「じゃあ入社までの学生生活を思いっきり楽しんでね。何かやりたいこととかあるのかな?」

その瞬間、私にひらめきがあった。

「そうですね…この就職活動、御社とのご縁は、今までの私の経験や出来事によって導かれたものだと思っています。過去の思い出は自分の貴重で最高の財産です。面接でもお伝えした通り、私は文章を書くのが好きなので、過去の出来事を思い出しながら、過去の出来事について日記でも書いてみようかなと思います。いま思いついたんですけど。」

人事は笑いながらこう言った。

「さながら回想日記って感じかな。頑張ってね。」

 

電話を切り、一気に解放感が押し寄せた。

しかしこの後にやらなければいけないことがある。

そう、辞退の連絡だ。

一つ一つの企業に連絡を入れていく。

特に一番最初に内々定を貰った企業に断りの連絡をするときには心が痛んだ。

しかし、例の女性の人事は最終的には私の決断を応援してくれたので、本当に良い人だな、と感じた。

 

私は電車ですぐに家に引き返した。煮卵への報告を行う。

みんなから祝福のLINEが届いた。

さあ、今日は祝勝会である。

 

-----2024年6月7日の私より-----

人生の分岐点となる一日でした。

転職が当たり前になってきてはいるといえ、人生で最初に入社し、長く働くことになる会社ですからね。

ただ、本当にこのとき入社できて良かったと思っています。

色々な経験を経ましたが、今でもこの会社にお世話になっています。

就職活動は結局、運と縁の要素が大きいです。

しかし、自分の気持ちに嘘をつかなかれば、きっと良い会社に巡り合えると思います。

これでひとまず回想日記は終了します。

これからは、特別編としてイベントにスポットを当てた単発の日記を書こうと思っています。

みなさまお付き合いいただき、本当にありがとうございました。