いよいよこの日がやってきた。
第一志望の企業の最終面接である。
前日綿密に作戦を練ってきたので、準備不足による緊張はほぼ無かった。
それでも朝目覚めてからどことなく落ち着かず。
良い緊張と悪い緊張があるが、これは良い緊張だと思うようにした。
出発前に「はなまるうどん」を食べに行く。
胃もたれのリスクを最低限にしつつエネルギーを摂取できるのでうどんは便利な食べ物である。
電車に乗り込み、いざ会場へ。
電車内ではありとあらゆるパターンの想定問答を思い浮かべていたらあっという間に最寄り駅に到着してしまった。
そのまま徒歩で会社へ向かい、受付を済ます。
おそらく最終的に内々定を貰えるのは5名程度。
受付の際に、最終面接に進んだ人の名簿のようなものが見えたのだが、10人程度は残っているようだ。
おそらく通過率50%といったところだろうか。
しかしもはやこの数値は私には関係ない。
自分をアピールすることにだけ集中すれば良い。
まずは待機室に案内された。
この待機室で、最終面接前のアンケートを記入するようにとの指示を受ける。
記入をしていると、同じく最終面接を控えた男子就活生が入ってきた。
妙な緊張感が漂う。
というのも、この企業は毎年男性新入社員を1人だけしか採用してきていないのだ。
つまり、おそらく私か彼のどちらかが受かり、どちらかが落ちる。
それは相手も知っていることだと思うので、話題に困った。
迷った挙句、「緊張しますね~」みたいな当たり障りのない会話を繰り広げ、相手も「そうですね~」という感じ。
妙に気まずさは残ったが、性格は良い人なんだろうなと思った。
アンケートを記入し終え、いよいよ最終面接会場に向かう。
男性就活生に最後に一声かけた。
「互いにここを通過して一緒に働きましょうね」
相手もにこやかに、「そうですね」と言っていたような気がするが、緊張感が高まり相手の返答が聞き取れないくらいに冷静さを欠いていた。
ビルの最上階の面接会場に到着。
人事のおじさんが確認するように告げる。
「この後最終面接が始まります。お伝えしていた通り、社長と取締役の2名との面接になります。」
ここまで私に告げると、少し間を置き、
「緊張していますよね?和田さんのいつも通りで大丈夫ですよ」
と言ってくれた。
この言葉を受けた私は「わかりました!」と言いながら一回無理にでも笑ってみた。
かなり発汗している自覚もあったが、自分に言い聞かせる。
「最初の挨拶さえ噛まなければ大丈夫だ」と。
いよいよ入室。
最初の挨拶、思いっきり元気よく行こうと決めた。
ドアを3回ノックし返事が聞こえた。
「失礼いたします!」
噛まなかった。
そう思うと同時に一気に緊張から解放されたから不思議なものである。
着席すると、一呼吸おいて社長が
「今日はよろしく。じゃあまずは自己紹介と志望動機から改めて聞かせてくれるかな?」とダンディな声で尋ねる。
大丈夫。この手の質問はもう何十回もやってきた。
「野球部に実質的?に所属しているんだったよね。目標の2部には上がれた?」
と過去の面接の流れを踏まえた質問も。
「はい。つい先日に入れ替え戦を制して2部に昇格しました」
と告げる。
目標を達成できるのは大したものだと言ってくれた。優勝して本当に良かった。
続いて、「趣味とかは?」と質問を受ける。
この質問ももちろん想定内。
何か文章を書いたりするのが好きです。と告げる。
反応はまあまあ。
ここまででだいたい5分くらいだろうか。
ここから取締役が質問を始める。
取締役からの質問は、志望順位や私の性格、勤務地の希望、給料に関することなどの事務的な質問が多かった。
そして面接開始から10分経過し、あの質問がやってきた。
「一応、我々が用意していた質問はこれで終わりなんだけど、逆に質問してみたいこととかあるかな?」
ここがある種ターニングポイントだったのだが、ここで私は攻めに出た。
「今日のニュースで移民政策について大きく取り上げられていましたが…」
私は今日のニュースの中で、会社に関連してそうなものを取り上げ、それに対する自身の見解と、会社の見解を聞いてみる、という作戦に出たのである。
この攻めの選択肢は、今思えば私にとっては不正解だった。
というのも、まず政治的なニュースについて自身の見解を伝えることに慣れていなかった。
結果的に、私の見解が真意と真逆に伝わってしまい、会話の混乱を招いた。
そして、この政治的な話は社長にとっても答えづらい。
あくまでも個人間の会話ではないということを配慮していなかった。
このミスに即座に気付いた私は、なんとか自然にIRの話を持ち出すことで、しっかり研究していることをアピールする方針に切り替えた。
しかしちょっと雲行きが怪しくなっているのは感じ取った。
そして最後の質問。
「何か最後に言いたいことはあるかな?」
御社が第一志望です。
それだけ伝えた。今度は嘘ではない。
面接終了。手ごたえは五分五分。
というより、やはり逆質問で一気に怪しくなった。
逆質問は、事前に対策していた通り「私の長所は御社のどこで活かせますか」系の方が良かったかもしれない。
帰路ではそんな脳内反省会をしながら煮卵に報告を行っていた。
煮卵メンバーも、こればかりはもう結果を待つしかないよね。
ということに。
この日の夜は全く眠れなかった。
明日もしかしたら人生の分岐点を迎えるかもしれないと思うと震えた。
とはいえ、今日受けた企業と同一グループの3次面接を翌日に控えていたため、深夜に飲酒し強制的に就寝したのである。
-----2024年6月6日の私より-----
本当に印象深くて今でもよく覚えいる一日です。
結果は翌日来ます。果たして私の就活は終わるのか。