この日の私は大忙しであった。
まず、行きつけの美容院で散髪をした。
なぜ散髪をしたのかというと、この後に運転免許の更新が控えていたからである。
私のような無事故無違反の優良ドライバーでさえ事故を起こしてしまいがちな運転免許更新時の写真撮影を、少しでも有利に行うための策でもあった。
ここの美容院はお任せでカットを注文すると、毎回某北の国の将軍様のような髪型にされるのだが、それは今回も例外ではなかった。
果たして免許更新前に散髪をしたのが本当に正しい選択だったのか疑問に思いながら免許更新の会場へと向かった。
今回は初めての免許更新であったので、私はブルーの免許に変更となる。
思いのほか会場が空いており安堵しているのも束の間、写真撮影の時間がいきなり訪れた。
緊張の一瞬。
奴らは何の合図も無しに事務的に撮ってくるので、いつでもかかってこいと言わんばかりに終始口角を上げながら椅子に座った。
座ったとほぼ同時に撮影されたので、私の作戦は正解だったと確信している。
まあ変顔にはなっていないだろうという自身を抱きながら、長い講習を終えて新しい免許証を受け取った。
ここで初めて自分の写真を見たのだが、点数にすると75点くらいだろうか。
あれだけの準備をしたのにも関わらず、運転免許証の写真にありがちな、中途半端な写り具合になってしまった。
更に不思議だったのが、口角を上げていたはずなのに全然上がっていなかったことである。
実はこの写真は私本人のものではなく、私の顔に近い別人の写真が貼られているだけなのでは、という疑念まで湧いてきたが、ここではいくら議論しても正解は出てこない。
その後、池田の待つ松戸へと向かう途中の電車で、私は人間の顔について深く考えていた。
そのとき、ひょっこりはんと煮卵の渡辺の顔が似ているという衝撃的な事実を突き止めてしまう。
早速煮卵にその旨を報告すると、池田は「確かに少し似ているが、渡辺の性格を考慮するとひょっこりはんではなく、がっつりはんではないか」という指摘が入った。
その数分後、「がっつりはん」をイメージした渡辺の自画像が煮卵LINEに送られてきており、そのクオリティの高さと、明らかに人混みの中で撮影したと思われることから渡辺の勇気に対して賞賛の声があがった。
池田もこの勇気に敬意を表し、「がっつりはん」を本家より流行させると豪語したが、その計画は現時点では全く動きを見せていない。
松戸に到着した私は、池田の新居に上がりこみ、狂ったようにフォートナイトを行ったのであった。
-----2024年5月21日の私より------
ひょっこりはんが流行りきっている頃でした。
時の流れは早いものですね。
当時の渡辺からの画像はもちろん今も閲覧できますが、かなりひょっこりはんに似ていると再認識しました。