この日は煮卵・池田の卒論発表会であった。
ここで最優秀賞を獲得すると、日程の問題で春の煮卵遠征に参加ができなくなるという、応援はするけど全力で応援はできない状況。
「2位じゃなきゃダメなんです」と、蓮舫議員も納得の言葉が池田を含む煮卵の総意であった。
かつての煮卵遠征を振り返った時、日程の変更や開催地の変更というトラブルは必ず起きていた。
そしてその原因の全てに池田が絡んでいるという歴史を踏まえると、今回もまた何かハプニングが起きる予感がした。
一応池田の名誉のために断言しておくと、池田のトラブルの原因は、「入学手続のため」など、当人にとっては仕方のない事情があってのことである。
しかし、西田の競馬が当たらない、山中が童貞を捨てられない、和田に彼女ができない、などといった抗えない運命みたいなのはある。
その上、煮卵メンバーが抱えるこれらの運命は強固なものである。
和田に彼女ができないのはともかく、例えば、西田はあの名馬・キタサンブラックを負かしたし、山中は風俗に行ったのに童貞を捨てられなかった。
万人にとって絶対的な出来事の結果さえ変えてしまう力は煮卵のメンバーにはあるのだ。
そして今回も、池田が最優秀賞を取ることによって遠征に参加できなくなる未来が見えてしまうのである。
そんな池田運命の卒論発表まで残り9時間となったとき、池田は煮卵を作っていた。
「これを食べて元気出す」という池田に対し、川口は「半ば機は熟した」などと上手いことを言っていた。
煮卵を食し終えた後に、卒論発表へと向かう池田。
その様子をライブ中継してくれないかと池田への要望は当然のように無視され、その結果を待ちわびる。
夕方、おそらく卒論発表は終えただろう池田から返信が無い。
「これはやったか?」という空気感が立ち込める。
最優秀賞を取ったのに、やらかした感を出される理不尽さを感じつつ、池田の反応を待つ。
そして22時。池田の返信があった。
発表後に打ち上げを行っていたため返信ができなかったようだ。
卒論発表の手ごたえを池田に問うと、最優秀はほぼあり得ないとのこと。
どうやら新種の病気を発見した人がいるらしい。
何にせよ、池田は抗えない運命を変えたのだ。それはパワーアイテムである煮卵を食べたことが原因であろう。
安堵した我々は、池田の家で酔いつぶれているらしい見ず知らずの他人のどこに落書きをするかという会議を行って夜を明かしたのである。
-----2024年2月16日の私より-----
池田は大学に最低点で合格し、首席で卒業したという努力の天才です。
本当に尊敬しますし、煮卵にとって欠かせない存在です。
今や、西田は競馬を当てますし、私には彼女がいますし、山中以外は全員運命を変えられています。
山中が殻を破ったとき、煮卵は更に一歩前進します。