自己紹介
続きです
2026.4月
お見送りの為に一緒に外に出たはずなのに、気付けば私はシャパシャパのカレーの話をKさんにしていた。
Kさんはうんうんという感じで、面白そうに聞いていた。
そこからなぜかおじいちゃんのあるある話に発展していった。
「強気で言うからママも大変だったでしょ?」
と言われ、本来だったら「そんなことないですよ」と言うべきところだが、
「大変だった~」
と、気付いたら言葉にしていた。
そしたら急に止まらなくなって、
たまにバトルになって頭に来て店でゴミ箱をガンガン蹴ってたら大家さんも店に来て『ママ!コーヒーちょうだい!』って言うから『来るのかよ~』って思いながらプリプリしながらコーヒー淹れてテーブルにガシャン!ってした日もあってそしたらなんて言ったと思います???『俺もママの機嫌取るの大変だよ~」って隣の客に言うんですよ~!!!
「どう思います?」
私が息継ぎもなしにそこまで言い切るもんだから、Kさんは爆笑していた。
誰よりもこの話をおもしろおかしく聞けるのは、おじいちゃんとずっと一緒にいたKさんなのだ。
そして私は続けた。
「でも喧嘩して2,3日したらけろっとしてて、後を引きずらないんですよね」
と、言うとKさんが、
「そうなんですよ!」
と、深くうなずいた。
だからなんとかやってこれたのだ。
立場と関係の深さは違うけど、きっとKさんもそうなのだろうと思った。
そして今度はKさんが話し出した。
「〇〇(おじいちゃんの名)にはいろんな人が寄って来て、よく騙されかける」
「でも直前で話が流れる」
とのことだった。
いかにもお金持ちっぽいおじいちゃんには、いろんな投資案件が持ち込まれるらしい。
以前、お金の話がまとまった時、おじいちゃんが席を立つ瞬間に先方が「にやり」と嫌な感じで笑うのをKさんは見ていたらしく、後になってそのことをおじいちゃんに告げると「そうか」と言って、結局その話は流れたとのことだった。そして、そういうことが今までもたくさんあったそうだ。
そんな大切な話をKさんは私に教えてくれた。
「でもママは大丈夫!」
Kさんはそう言った。
「どうかな~」
と言って一応にやりと笑ってみせた。
Kさんと自分が似ていると感じたのは、そういうところなのかもしれないと、Kさんの話を聞いて納得した。
・
さっきまで日が伸びたと感じていたはずなのに、気付けば外は真っ暗だった。
二人でおじいちゃんの憎らしい話をしていたはずなのに、
「意外と笑顔がかわいい」
「なんだかんだ憎めない」
「面倒見がいい」
「一周回って偉そうなのがなんかいい」
最終的にそんな話になっていた。真っ暗になった店の外で、Kさんとケラケラ笑いあった。
・
ほんの数年前、おじいちゃん所有のこの家を無理をすれば買えなくもなかった。
あの時は買ってしまいたかった。
買ってしまえば、おじいちゃんとの関係は解消できる。
正直に言えば、そう思っていた。
そして時が経ち、Kさんが登場した。
今は買えなくてよかったというより、買わなくてよかった。
買ってしまえば、おじいちゃんとの関係も切れてしまう。
それはおじいちゃんとの関係を解消しなくてよかったと思えているということだ。
こんなおもしろい関係は手放したくない。
おじいちゃんの登場によって、私の人生は数段面白くなった。
東京価格の家賃は、おじちゃんの弁当を毎日作ることでペイされた。
・
Kさんと暗い夜道で立ち話をして爆笑する日が来るなんて、あの時の私は知る由もない。
うまくいかないことは、うまくいかない方がいいから、うまくいかないのかもしれないと、自然に思えるようになった。
もっといい道があるということだ。
Kさんとの立ち話は完璧な伏線回収になった。
・
この日の夜のことを書きたくて、それで私は大家のおじいちゃんのことを最初から全部書いてみようと思った。
でもなぜか、書きながら涙が止まらなくなってしまった。
・
急にこんなことを言って、驚かせてしまうかもしれないけど、実はおじいちゃんは、
生きています。
(笑)
その日の夜のことを私はリール動画にまとめました。
リール動画はこちら↑
続きます



