ほぼ一年ぶりの更新です。


今年もコンクールが始まっていますね。

先日は契約講師の勉強会で上京してきました。


今年は、長野印刷の伊藤社員が、風邪で休んでいる

水島社員のかわりにクレームを受け、お客様に解決策を

提示して了解をいただいたあと、上司の携帯留守番電話に

お客様にお詫びの電話を入れてもらうよう

メッセージを20秒以内で残す。というものです。


ビジネスシーンに見られる設定で、よりリアルな事例かと

思います。仕事をする上でそれぞれの領域があり『お客様の

立場』『自社の立場』『本人の立場』をよく考えて応対する問題と

なっています。


実際、担当外の仕事をどこまで対応できるのか。

難しいですよね。


☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆


岩手県大会は大きな会議室のようなところで行われました。


ステージがないだけでもかなり気が楽だったのを覚えています。


選手として参加するのは実に12年ぶりでした。


私がコンクールに初めて参加した頃の電話応対は『キレイな声で』

『そつなく』『美しい』応対がよしとされていました。


でも、その頃と今とは違います。

時代の流れとともにその頃の電話応対は『感じよく』『お客様が満足

するように』『気の利いた応対』が求められていました。


そして、一番の難関はその年から『クレーム応対』が課題に

入っていたことです。


ただ単に感じの良い応対だけを目指して、普段の電話応対を

こなしてきた私にとってこれはハードルの高い注文でした。


クレーム応対って何だろう・・


お詫び?


何をどういえばいいんだろう・・


その年の問題はコピー機販売会社の社員で、お客様から

『コピー機の調子が悪い。故障じゃないの?』

というクレームが入り、操作ボタンを確認して、用紙切れと

いうことがわかります。


そして、トナーカートリッジの説明と、そろそろ用紙切れの

時期となったのを見越して再生紙利用のコピー用紙のセールスを

するというものでした。


しかも、後半は二者択一で、お客様がどちらの用件を

言うかわかりません。


かなり難易度の高い問題でした。


選手でごった返していた控え室は、競技が始まると3人ずつ

呼ばれて姿を消していきました。


にぎやかだった控え室の人数が半分ほどになり、

待つ間の緊張感で周りの選手は口数が少なくなっていきました。


私はというと、原稿を出して読んでみても、どこかうわの空。


気持ちが入りません。


どきどきと胸の鼓動ばかりが耳鳴りのようにこだまします。


手には汗。いやな汗です。


私は完全に舞い上がっていました。


その頃から県大会は原稿持込不可。

地区大会は原稿を見ることができますが、県大会は原稿なしで

完全に暗記したものをステージで披露するというものです。


ステージ上で自分を見失わず、いつものように

応対するのは至難の技です。


中には口ごもったり、声が上ずって早口になったり、

言うべきことが完全に飛んでしまって、競技がストップする

選手もいました。


控え室に係員が迎えにきました。


「次の方、〇番、□番、△番の方。どうぞ」


・・・ついにきた!


私は隣に座っていた別の選手に作り笑いをして


「じゃ、行ってきま~す」


と席を立ちました。


・・・どきどき・・どきどき・・・・


一階上の会場に向かいます。

階段を上ると目の前には廊下。

その奥には競技会場の扉が見えました。


選手が出入りする扉は廊下の奥にあり、控え用の椅子が3つ

並んでいます。


私は座ったら自分のテンションが落ちてしまいそうで、怖くて怖くて

座ることができませんでした。


両手で耳をふさぎ、目を閉じて、立ったまま、うろうろぐるぐると

歩きながら応対原稿のセリフをつぶやきました。


(・・トナーランプは点灯していますでしょうか・・・トナーカートリッジは・・・

そろそろコピー用紙が・・)


すると、不思議なことに今まで耳元で聞こえていた鼓動が

すーっと引いていき、周りの音が完全に遮断され、

自分の声だけが身体の中で響いている感覚に陥りました。


静寂の中、自分だけの声が聞こえます。


(そうしますと・・・よろしくお願いします・・・)


いつもの自分の声のトーン。


(・・失礼いたします)


笑顔で終話。


と、その時


「△番の方、どうぞ」


係員が私に声をかけました。


「はい!」


笑顔で返事をする私。


いよいよ・・


出番です!