まだ雪深い2月、とある障害者支援施設の担当者さまからご相談の連絡がありました。
高齢の母親と暮らしている障害のある男性が、母親の入院を機に独りでは暮らして行くのが難しくなり、施設への入所を検討しているが、飼い猫がおり、その子の行き場所が無く、施設への入所が出来ないでいるという内容でした。
ボランティアを派遣して、ご相談頂いた担当者さまと現地で猫ちゃんの確認と飼い主様にお話を聞かせて頂きました。
飼い主様は障害があり、独りでの生活はなかなか難しく、男性の独り暮らしになってしまってからは、お家はゴミの山になってしまっていました。
そこに暮らすのは、『リリー🐱』という名の10歳を過ぎたシニアの猫ちゃんでした。
飼い主さまとしては、可能な限りこの家でリリーと共に暮らして行きたいのが本音でした。
でも、ご自身でも生活が立ち行かなくなっている事を理解し、リリーを手放し、施設に入る事を受け入れたとの事です。
そんな飼い主さまの気持ちをボランティアからの報告で聞き、可能な限りギリギリまで一緒に暮らしてもらいたいと私たちも願いました。
もう10歳を超えたリリーです。
その歳で、ずっと一緒に暮らしてきた飼い主様と別れ、住み慣れたお家を離れなければならないのが不憫でした。
しかし、飼い主さまが入所する施設が決まり、7月1日には新たな生活をスタートさせる為、その前にリリーを引き取りに行かなければなりません。
6月29日、担当者さまと待ちあわせして飼い主様の自宅を訪問しました。
初めてお会いする飼い主様、リリーとの別れをご自身の中で何とか乗り越えようと、つとめて明るく話しているのが伝わります。
リリーを手放す事、飼い猫を手放して保護施設に入れる事は決して幸せの確約切符ではないのです。
特に高齢の猫ちゃんは、環境が変わるだけで体調を崩し、たくさんいる他の猫たちの中で、ストレスを抱えながら生きて行く事になります。
老猫はそのような環境で病気になるリスクも高く、命を落とす子もいるのが現実です。
大切にしていた猫ちゃんをハウスに迎える時、飼い主様にはこのような厳しいお話しもさせて頂きます。
もちろん、たくさんの愛情で出来る限りのお世話はさせて頂きますが、家族として愛され、安心出来る住み慣れた穏やかお家に勝るものはありません。
リリーを手放す事は、もう自分の手で守ってやれないという事。
それが現実に突きつけられ、飼い主様は堪えていた涙を流し、大きな音を立てて鼻をすすりながら泣いていました。
『一生懸命お世話させて頂きます。』
私に言えるのはこれくらいです。
会いに来れるなら是非会いに来て欲しいとお伝えすると、飼い主様は少し安堵したような顔をされていました。
車に載せる時、最後まで『ゴメンね、ゴメンね』とキャリーの中のリリーに話かけてる飼い主様に、リリーも顔を寄せて不安そうに見つめています。
一緒にいたいのに、離れなければならない悲しい別れは、幾度となく立ち会っても胸が締め付けられる想いです。
リリーはこれから、守ってくれる家族もいない、100匹の猫たちと一緒に暮らして行く事になります。
ここが、リリーが生きて行く場所になります。
リリーには、出来るだけ早く里親さまが決まり、穏やかな暮らしに戻れるようにしてやりたいと願っています。
『リリー』
10歳の女のコ
避妊手術済みで、ハウスに迎えた際に3種混合ワクチンも打ちました。
血液検査の結果、ウィルス検査はエイズ、白血病ともに陰性です。
家族に迎えて下さる方のご連絡をお待ちしております。
《連絡先》
☎080-3266-2433
✉sorachicullingzero@gmail.com