飼い主のバカヤロー | 保護猫&ドッグラン 『 さばいでぃ』

保護猫&ドッグラン 『 さばいでぃ』

犬猫の殺処分0を目指し、人と行き場のない動物たちの新たな出逢いのきっかけを作りたい。


1月中旬頃、『さばいでぃ』のハウスボランティアゆかちゃんから、昨年暮から近所でお腹に紐のような物が巻き付いている猫を見かけると報告がありました。
その時は、近づくだけで逃げてしまう為、猫の状態が詳しく把握出来ませんでした。



ゆかちゃんに課されたミッションは、よく居る場所に段ボールを設置し、ご飯をあげて人間に慣れさせ、この人は大丈夫だと信頼してもらう事。
早速、猫がよく佇む民家の駐車場に段ボールを設置させてもらい、毎日のように通い、ご飯をあげて信頼関係を築いて行きました。



日々報告をくれる写真から、猫の酷い状態が分かって来て、その子に生きる為に残された時間の猶予は無いと見受けられます。


お腹には、お散歩用の首輪かハーネスが巻き付いており、成猫のお腹としてはあり得ない、直径5センチあるかないかまで絞られていました。

多分、散歩中に脱走し、首や腕に通す部分を一生懸命脱ごうてして、お腹まですり抜け骨盤の両足の付け根に引っかかりそこから脱げなくなってしまったのでしょう。

よく生きていたと驚くほどの細さでした。

それが分かってからは、本格的にその猫ちゃんの捕獲に向け、ゆかちゃんの奮闘が始まります。

報告をもらって数日、私も現地に向かいました。
ご近所に聞き込みをすると、その界隈で紐でしばられた猫の存在を知る住民の方はたくさんいました。

何とか捕獲しようと試みた方、生き延びられるように餌箱を設置してくれた方、その猫は昨年の夏の終わり、9月頃、まだ少し小さい幼猫の時からお腹を紐で締められた状態でそのあたりを徘徊していたそうです。

そんなに前から…
子猫の時に付けていた首輪かハーネスがお腹に食い込んでいるのか。
それを想像したら、成猫に成長したお腹にその紐がどれだけ食い込んでいるのか、考えただけで恐ろしかったです。

ゆかちゃんは毎日毎日、猫が現れる2つのポイントを訪れ、ご飯をやり、近づいても逃げない距離まで間隔を縮めました。



『さばいでぃ』は捕獲の際には捕獲器を使いません。
その為、捕獲には時間と労力がかかります。

他の愛護団体の活動をブログで知るボランティアたちは、さばいでぃの大変な捕獲に捕獲器を使いたいと思っている人もいるのかもしれません。しかし、そうじゃないやり方でも猫を捕獲出来る事を理解し、さばいでぃの捕獲のプロセスをしっかり忍耐強く遂行してくれています。

でも、この猫ちゃんにいつまで猶予があるのか、数日姿を見せない猫ちゃんの事を心配するゆかちゃんの報告や、絶好の捕獲のチャンスを幾度か逃した事などもあり、私の気持ちが少しグラつきました。

ゆかちゃんには、焦らず忍耐強くと何度も言っておりましたが、最後、この作戦で上手く行かなければ、もう無駄に時間を費やせないので、捕獲器も検討すると伝えました。

ゆかちゃんは根気強く私が指示した方法で捕獲のチャンスを待ってくれました。

私は昼夜問わず仕事や作業に追われているため、ボランティアからの連絡はほとんどLINEで来ます。
しかし、緊急の時はどんな時でも電話をするよう伝えてあります。

私が仕事中の時間に電話が鳴りました。
出れない時間と分かっていて、あえてボランティアが電話を鳴らすのは緊急事態です。

その電話は、わたしがずっと待っていた連絡でした。
『マミさん、今、猫が設置した段ボールに入っていて、やれそうです!』

私、『では、焦らず指示通りにね。今から向かうと20分くらいかかるけど、それまで1人で抑えてられる?』

『はい、大丈夫です!』

車を走らせている道中、ゆかちゃんが成功したか、はたまた失敗だったか、気が気じゃなかったですが、作戦中にどうなったのか電話を鳴らして失敗させてしまう事もあるため、到着するまで結果を確かめられず、ドキドキしていました。

しかし、到着すると、作戦通りの状況で不安そうな顔をして待ってるゆかちゃんが居ました。
『よし!良くやった!』
思わず力一杯ゆかちゃんの背中を叩きました。
私はさばいでぃのボランティアになるまで、猫を飼ったこともないゆかちゃんの頑張りに泣きそうでした。

せっかく捕獲出来た大切な命、逃してしまうなどの失敗は出来ません。
二人で万全の対策を取り、慎重に車まで運び、私はそのままかかりつけの旭川の病院に走りました。

旭川までの爆走中、車内には酷い腐敗臭が漂い、この子のお腹がどのような状態なのか何となく分かるようなそんな匂いです。

病院到着後、以前から相談していた院長先生に見てもらえる事になり、3人ががりで紐を切って処置して頂けました。









子猫の時につけられたハーネスでキツく縛られたお腹は、子猫の時から成長が止まったままでした。
その腹腔には臓器が通る場所はなく、かろうじて大腸だけが通り、何とか排便出来た事で命が繋がっていたとの見解でした。
皮膚や筋肉などの組織は削げてしまっていました。

処置には長い時間がかかりましたが、猫ちゃんは痛みに耐え、鳴きながらも何とか頑張ってくれました。












愛護団体の責任者として、過激な発言は、批判のやり玉に挙がり、応援して下さる方が離れる事につながりますが、それでも今回はハッキリ申し上げたい。

犬や猫の命を預かるのは、小さな子どもを育てるのと一緒。
飼い主が起こりうる事故を想定して危機管理をしなくてはなりません。

窓やドアの隙間から脱走して行方不明になった、高層階の窓から落ちて重症を負った、通院や移動のキャリーから飛び出して逃げてしまった、日々たくさんの悲しい投稿を目にしますが、全て飼い主や扱う人の慢心や危機管理不足によるものです。

猫を飼う以上、猫の事をきちんと勉強し、その行動を理解し、小さな子どもを育てるように起こりうる事故を未然に回避する想像力を働かせなければなりません。
危機管理とはそういう事です。

リードを付けての散歩をしている方は世の中にたくさんいるでしょう。
普段は大丈夫でも、普段起きない不測の事態が起きた時に(車のクラクションなどの大きな音に驚く、散歩中の犬に追いかけられる等)猫は驚き、体の全ての力を使い必死に逃げようとします。

そうなると人間では抑えられない力で暴れて逃げるのです。
体にハーネスなどが付いたまま戻って来れずに野良として生きて行く事になれば、それが足かせとなり、引っかかって見動きが取れず、餌にありつけずに餓死します。
この子のように抜け出そうと体の一部に引っかかり、部位によっては圧迫されて命を落とす子も居ます。
運良くすぐに命を落とす事が無くても、長きに渡りこのように苦しみながら生きて行くのです。

『そうなるなるて考えもしなかった…』なんて、命を預かる以上、自分に対する甘えと言い訳です。
そういう事を事前に予測し、動物たちに危険が及ばないように飼わなければなりません。

今も猫にリードを付けて庭先に繋いだり、散歩している皆様、今回の子の投稿を期に今一度猫の安全について考えてみて下さい。


それでも、起こるか分からない不測の事態の為に、猫の楽しい時間を奪いたくないと考える方は、日々危機感を持ちながら、万が一の時は、その手綱を死んでも離すな!
と私は言いたい。