ソムリエ試験には裏話がありました。
暗黒の歴史なので一度封印した記事ですが、もう一度読みたいとのアンコールを受けました。
こんなバカは二度としないようにと自分への自戒の念を込めて、再掲載しようと思います。
こんなバカも生きてるから自分も捨てたもんじゃないかな、と皆様の生きる希望としてお役に立てる、
わけないか
ソムリエ試験には受かっていた今だから明かせる重大な過失を犯していました。
二次試験は、先にティスティング、その後制服に着替えて行うサービス実技の二種類の試験があります。
二次試験当日、
試験会場のあるグランドプリンス新高輪のある品川に一時間前の余裕の到着をしました。
電車の遅れによる遅刻の心配はなく
少し駅周辺で時間をつぶし、早めに会場へ向かったその時
気がつきました。
実技試験に使うソムリエエプロンを、入れ…?
入れた記憶がないっ…
血の気が引くのを感じながら鞄の中身をかき回しましたが、
入れてないものはでてきません。
ソムリエエプロンは家でお留守番していることが確定しました。
「ソムリエエプロン忘れないように」とシェフに注意喚起されていたにもかかわらず、その言葉が耳に届いたのは翌日の品川。
道ばたでパニックに陥りながら
とっさに思い付いた選択肢は、
①取りに戻る
②ソムリエエプロンなし。ズボンのポケットからソムリエナイフを出し、忘れ物しました、まぬけでごめん、で試験を受ける
③究極に恥を忍んで見ず知らずの受験者に頼んで貸してもらう(迷惑行為のため却下)
④近くで探す
⑤受けて落ちたことにする(思い付いたがすぐ却下!)
駅のスーパーでワインを見ている場合じゃなかった!
カフェのメニューを眺めてる場合じゃなかった!!
混乱した頭で、慌てて山手線に飛び乗りました。
この窮状に鈍る一方の思考
山手線車内にもかかわらず、電話を取りだしおもむろにシェフに発信。
神のご加護か電話がつながり、シェフと通話ができました。
車内通話はマナー違反と承知の上でも背に腹は変えられず
「あの~…かくかくしかじか…」、と
自らの失態が車両内に漏れていく…
折しも夏期休暇初日。
リラックスのひとときを過ごしていたシェフが、ことの次第を受け、一気に覚醒。
「言ったのに!!」
とにかくソムリエエプロンを途中まで届けてくれることを請け合ってもらい通話を終えると
12:42分
池袋までとんぼ返りしても往復一時間
薄々気がついていたものの、
改めて現実と向き合うと、
このままだと試験開始の13:40に間に合わないことが確定。
人の手を煩わせてもなお間に合いそうにない現実に目を背けながら、車内で悶々とする一方、
衝撃の電話を受けたシェフが、店までダッシュしてくれていました。
私のソムリエエプロンをつかみ全力で体をゆらしながら駅に向かうシェフ。
だるんだるん揺れる
だるんだるん揺れる
燃料の脂肪が高速で燃える。
燃え盛るミシュラン君。
全力で疾走する最中、NEEDsさんの奥さんとすれちがったそうですが、
とんだ巻き添えをくらいまさかの一刻を争っていようとは笑顔の彼女は知る由もない。
シェフ、本当にごめんよ。
全力移動を遂げ池袋に到着したシェフから原宿通過中の私に
「受け渡し時間がタイトで間に合わいそうもないので買った方が確実であり、
ソムリエエプロンは無印良品で入手できる」との一報が入りました。
ガンバれよ!の言葉と同時に、
山手線が新宿駅に到着。
無印良品の店舗を調べるための立ち止まる猶予がない状況で
電車の扉が開くとともに飛び出した私の頭にただひとつ浮かんだ選択肢
東急ハンズ
を目指しわき目もふらず全力疾走。
何度も行ったことのある新宿ですが、新宿駅をこれくらい全力で走っている人を見たことがありません。
サザンテラスのデッキを駆け抜け、
東急ハンズ三階のキッチン用品売り場でレーダーのごとく目標物をサーチ
あった!
掴むようにレジに向かい
「すぐ使うんで」
と伝えタグを切ってもらいましたが、
我ながら『すぐ使うソムリエエプロン』って…、と数奇な運命のソムリエエプロンの会計を済ませると鞄に突っ込み、来た道を高速Uターン。
強烈に目に焼き付くサザンテラス。忘れることができません。
肩で息をしながら飛び乗った私を乗せて山手線が品川駅に到着したのは
試験開始12分前。
電車を飛び出した瞬間から走る!
さらに走る!!(速くない)
そして疲れて歩く。
歩いてる場合じゃないのに歩く三十路。
走れメロス。
会場が近いのに受験者らしい人は一人もおらず、ここにきて試験会場を間違えていたら全てが水の泡。
受験票を再確認する猶予は残されておらず、必死の形相でたどり着いたのが
試験開始4分前。
疎らな人影に不安になりましたが、
試験会場の二階にあがると受験者でごった返していました。
よかった。間違えてなかった。
ところが…、
ここでさらに肝を冷やす出来事が。
アナウンスで、
「受験者は必ず着替えてから入場して下さい」と。
必ず着替えて?!
見回すと、ばっちりときめたキャビンアテンダントやサービスマンら、まぶしい制服の群れが決戦を前に今や遅し、と待機しています。
私はティスティング終了後に着替えて実技試験の気でいたため、
今すぐにでも実技が出来そうな周囲の状況を目の当たりにし、
ここにきて心拍数最大
試験用のシャツとパンツを自宅から着用してきていたことは心底運がありましが、
靴と買ったばかりのソムリエエプロンは未着用。
更衣室に行く時間は残されておらず、わずかな時間にトイレに駆け込み、
個室で靴と真新しい折り目のあるごわごわした丈の長すぎるソムリエエプロンを着用し、
はぁはぁと息が上がったまま滑り込みで着席しました。
試験の注意事項が読み上げられている間、
遅刻寸前を周囲に悟られないようにゆっくり息を吐き出しますが、
汗は出るは、体から熱が発散するは、酸素は追い付かないわ、のどがカラカラ。
どう見回しても私のようなまぬけな受験者はいなさそうでした。
見事なまでに整然と席が埋まっていました。
欠席で試験を棒に降る人は皆無。 今から挑む二次に際し、張り詰めた空気が会場を満たしていました。
それにしても
喉の渇きMAX
席に五種類のティスティンググラスと水のグラスがひとつ。
水のグラスは鈍った舌を正常に戻すためのものですが、
その水を一気に飲み干しそうなのを抑えて
カラカラの喉を試験用のワインで潤すことになるとは、夢にも思っていませんでした。
その後の二次試験の様子は以前ブログで澄ましてお伝えした通りです。
緊急事態を引き起こし万全の体制とは言い難い状況で落ちたら、お世話になった人達に合わせる顔がないので結果がわかるまではこの出来事は伏せられていたのでした。
池袋まで全力疾走をし、
芸術劇場前でソムリエエプロンを片手に、ただ一服して家に帰る、というとんだ夏期休暇の初日を迎えてしまったシェフには試験後ひたすら謝ったのですが、
「許す。でもこのことはブログに書くように。ネタができてよかったな~」
と天使のような悪魔のようなお達しがありました。
さすがに、落ちたらシャレにならないので、受かったら書くことを約束し、
二次試験が終了後、お客様から「試験どうでした?」と聞かれるたびに、私の背後から
けけけけ
という悪魔の笑い声が響いてくる日々がつづいたのでした。
完
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