茨城県の最北端に位置する北茨城市に平潟という小さな港町がある。少し歩けば勿来の関、関八州と奥州との境という地理的な事情もあってかつては仙台藩との関わりが深く、東廻航路の寄港地として栄えた歴史も。

そんな事情のため、戊辰戦争の際には新政府軍が奥州侵攻の橋頭保とすべく「平潟上陸作戦」(ノルマンディー上陸作戦みたいな)を決行し奥羽越列藩同盟と対峙した地だが、現在では魚の「あんこう」が有名な、のどかな漁村。

「西のフグ、東のアンコウ」などと言われるが、あんこう自体は茨城に限らず日本各地で水揚げされている。それでも茨城のあんこうが有名なのは大洗や平潟に伝わる漁師料理発祥の「どぶ汁」故であろう。

「どぶ汁」とはあん肝を炒った鍋にあんこうの身と野菜を入れ、水分が出たところで味噌で味を調える濃厚な鍋。水の不便な小さな漁船の上で漁師達が作っていた「加水なし」が本来の調理法なのだが、近年は出汁を加えたものが多い。


調理中のどぶ汁。大洗ホテルにて

ヨメはそのどぶ汁が大好物のようで、知り合う以前はあんこうが旬の冬になると北茨城に度々通っていたようだが、いつも行くのはクルマで日帰り。だから酒は飲めない。「腹いっぱいどぶ汁食べて、しこたま日本酒飲んで、そのままひっくり返って布団被って寝たい」とのヨメの願望を果たすため、最近は時期になると一泊してあんこうを食しに出かけるようになった。

幸い、ヨメが贔屓にしている平潟の『相模屋』というお店は民宿。「そのままひっくり返って布団被って」もOK。


相模屋のどぶ汁

今回ブログに書きたいのはそのあんこうのことでは無く。今年の初めに泊まりに行った時に「そういえば夏は何を出しているんだろう?」とヨメに聞いた。あんこう、この一帯では7~8月は禁漁だ。冷凍モノなら一年中あるだろうが、平潟の必須アイテムである「どぶ汁」には生のあんこうが欠かせない。かといって夏の行楽シーズン、まさか「出すモノが無いから」と民宿を閉めている訳では無いだろう。

「その発想はなかった」とヨメ…まぁアレはそういうあれなのでともかく、宿の人に尋ねたら「穴子」と。夏はマアナゴの二度ある旬の一つ、さっぱりとした「梅雨穴子」「夏穴子」の時期だ。近くには海水浴場もある。「それでは」と予約を入れた。


 

今月初め、群馬(海なし県)の四万温泉に行った帰り道に立ち寄った「道の駅・中山盆地」にこの萌え絵?のポスターが貼られてた。


これは平潟港にて

四方を山に囲まれた高山村で「久々に海いくべ」はいいなぁと。磯原海岸なら平潟のスグ隣。「ここで海水浴してから穴子を頂くべ」と先日出かけてきた。



訪れた7月21日、浜では海開きが行われていた。なんでも磯原二ツ島海水浴場、五年ぶりの海開きとのこと。新型コロナの影響。





白い砂、人口密度も低くてのんびりまったりできる。あと、有難かったのが駐車場(無料)。大部分が道路の高架橋の下にあるので高確率で日陰に駐められる。この時期には一旦熱せられた車内を冷やすのは大変なので何より。

都内から、他と比べたら渋滞発生の少ない常磐道で二時間半。夏のシーズンでも所要時間は湘南までとほぼ一緒。南伊豆までの半分くらい。さらに。この一帯は涼しい。多分都心よりも気温は5℃は低い。

因みに私が行った時、海の家はナシ。最近はDJが爆音で回している、ほぼクラブの様なそれが浜に並び、半ば酔っ払ったヤカラがあちこちに溢れてる賑やかな海ばかりだったのでこういうとこ、懐かしく感じた。



これが二ツ島。かつては島の頂き辺りには木もあったが、震災のあれで緑が失われてただの岩に。それから13年、少しずつ以前の姿に。以前はもう一つ、隣に小さな島があって、それで「二ツ島」なのだが、津波で破壊されてしまったとのこと。



海水浴の後、少々寄り道をしてから平潟港の民宿相模屋へ。


平潟港


民宿相模屋

夕食。あんこう食べに来た時にも思ったが、浜で揚がる他の地の魚がイイ。





こちらは穴子。





土鍋で炊かれた穴子ご飯。おこげもパエリアのように香ばしく、美味しく頂きました。

一泊2食付きで一万円でお釣りが出ます(酒代は別)。

夏の北茨城、良かったです。来年も行く。



【平潟港温泉民宿 相模屋】
茨城県北茨城市平潟町301 0293-46-0512 常磐道北茨城ICから車で20分

【磯原二ツ島海水浴場】

茨城県北茨城市磯原町磯原 常磐道北茨城ICから車で10分