終戦の年の秋、小学校5年生の3学期から下町の小学校に転校した私は、威勢のいい女の子たちの中でとてもおとなしい女の子だったと思います。
一人っ子で育ったので一人遊びは得意でしたが、元々の人見知りもあって自分から積極的に話しかけたりが出来ず、人から声をかけられて初めて他人との関係を築くというのは大人になってからも、今でもずっと変わっていません。
でも人嫌いではなく、人と交わるのは好きなのでデートに誘われるのはいやではありませんでした。
ジャズ仲間たちとのパーティーなどでは人並みにお酒も少しは飲めるようになっていました。当時はもっぱらウイスキーの水割りが中心で、今ほどビールビールの世の中ではなかったような気がします。
シーバスリーガルのような上等のウイスキーの水割りだとほんのり良い気分になって悪酔いしないことも覚えました。
ですから同じ中学に来ていたことも知らなかったテルオからデートに誘われた時も軽い気持ちで出かけました。
同じ町の出身で、ちゃんと家庭も持ち子どもも有名な進学校に通っていると知って安心して会える相手だったのです。
彼もあまりお酒は強くなく、お互いに食べる方が専門でいろいろな話をしました。
私のようなおとなしくて影の薄い女の子をよく覚えていたと思うと言うと、何と近づき難い存在だったのだそうです。だから声もかけられなかったと。
山の手育ちは子どもながら全く違う感じだったそうで、うっかり気安く声をかけたらバカにされるのではないかとずっと遠くから眺めていたと言われてびっくりしました。
大学を出て商社マンになったそうですが、江戸っ子気質が仇となって上司と大喧嘩をして辞めてしまったこと、今は貴金属を扱う自営業をしているので時間の自由が効いていいと話していました。
お互いの実家が300メートルくらいしか離れていないこと、彼のお母さんは江戸時代から続く髪結いさん、つまり美容師で、今は美容院を経営していること、お父さんは魚屋さん。それも店舗は持たず、目と鼻の先の築地で高級料亭専門に魚介類を届ける仲買人をしているとのこと。同じ魚でも普通の魚屋に来るものと高級料亭や寿司店に行く魚では等級が違う話など知らないことばかりで話が弾みました。
私の実家がお店をしていることは知っていて、何度か前まで行ったけどどうしても入って行けなかったという話もしていました。
4年に一度の鉄砲洲稲荷の本祭りでは必ずお神輿をかついでいたこと、氏子の範囲は歌舞伎座まで続いていたことなど初めて知ることばかり。
お互いの実家の丁度中頃にあまり大きくない公園があり、そこではいつも夏に盆踊りが行われるのですが、そこで踊っていた私も見かけていたそうです。
初めての彼とのデートはこれまでにない気安さと親近感で楽しく、それから時々会うようになりました。
当時はまだ銀座に路上駐車が出来たので、彼は時には車で来ては帰りは同じ方向なので私の自宅まで送ってくれました。
何度目かのデートの帰り、いつもと違う道を走っていると気付いた時、すでに車はあるホテルの駐車場へ入って行っていました。
一人っ子で育ったので一人遊びは得意でしたが、元々の人見知りもあって自分から積極的に話しかけたりが出来ず、人から声をかけられて初めて他人との関係を築くというのは大人になってからも、今でもずっと変わっていません。
でも人嫌いではなく、人と交わるのは好きなのでデートに誘われるのはいやではありませんでした。
ジャズ仲間たちとのパーティーなどでは人並みにお酒も少しは飲めるようになっていました。当時はもっぱらウイスキーの水割りが中心で、今ほどビールビールの世の中ではなかったような気がします。
シーバスリーガルのような上等のウイスキーの水割りだとほんのり良い気分になって悪酔いしないことも覚えました。
ですから同じ中学に来ていたことも知らなかったテルオからデートに誘われた時も軽い気持ちで出かけました。
同じ町の出身で、ちゃんと家庭も持ち子どもも有名な進学校に通っていると知って安心して会える相手だったのです。
彼もあまりお酒は強くなく、お互いに食べる方が専門でいろいろな話をしました。
私のようなおとなしくて影の薄い女の子をよく覚えていたと思うと言うと、何と近づき難い存在だったのだそうです。だから声もかけられなかったと。
山の手育ちは子どもながら全く違う感じだったそうで、うっかり気安く声をかけたらバカにされるのではないかとずっと遠くから眺めていたと言われてびっくりしました。
大学を出て商社マンになったそうですが、江戸っ子気質が仇となって上司と大喧嘩をして辞めてしまったこと、今は貴金属を扱う自営業をしているので時間の自由が効いていいと話していました。
お互いの実家が300メートルくらいしか離れていないこと、彼のお母さんは江戸時代から続く髪結いさん、つまり美容師で、今は美容院を経営していること、お父さんは魚屋さん。それも店舗は持たず、目と鼻の先の築地で高級料亭専門に魚介類を届ける仲買人をしているとのこと。同じ魚でも普通の魚屋に来るものと高級料亭や寿司店に行く魚では等級が違う話など知らないことばかりで話が弾みました。
私の実家がお店をしていることは知っていて、何度か前まで行ったけどどうしても入って行けなかったという話もしていました。
4年に一度の鉄砲洲稲荷の本祭りでは必ずお神輿をかついでいたこと、氏子の範囲は歌舞伎座まで続いていたことなど初めて知ることばかり。
お互いの実家の丁度中頃にあまり大きくない公園があり、そこではいつも夏に盆踊りが行われるのですが、そこで踊っていた私も見かけていたそうです。
初めての彼とのデートはこれまでにない気安さと親近感で楽しく、それから時々会うようになりました。
当時はまだ銀座に路上駐車が出来たので、彼は時には車で来ては帰りは同じ方向なので私の自宅まで送ってくれました。
何度目かのデートの帰り、いつもと違う道を走っていると気付いた時、すでに車はあるホテルの駐車場へ入って行っていました。