初恋の彼の家は、私の家から一直線に銀座1丁目まで続く道の途中にあったので、うちからは400メートルくらいの所。家にもよく遊びに行きお母さんや妹さんとも仲良くなりました。

そんなある日、訪ねて行くと家がとても静かです。
家族が出かけて彼一人しかいませんでした。
なんとなくドキドキしながらいつものように彼の部屋へ行くと、いきなり抱きしめられてキスをされました。

うっとりしていると手が胸に入って来ました。
ええっ?と思っている間もなく、今度はスカートの下に伸びて来たのであわてて、手を振りほどき、そのまま家に帰って来てしまいました。

勿論初めてのことでびっくりしたのもありましたが、実はその時、おばあちゃんが編んでくれた毛糸のパンツを履いていて、それに触られるのがとても恥ずかしかったから、というのが本当です。

今思えば年頃の男の子にしては自然の成り行きで、無理もないことだと分かりますが、まだまだキスだけで十分だった未熟な女の子だった私にとってはまだそれが嬉しい(?)と思えるまでの気持ちが熟しておらず、私の初恋はそれで呆気なく終わりを告げたのでした。

うちに初めて電話が引けたのもそのころのことでした。
それまでは、「電話の権利」というのを買わなければ電話は引けず、それがかなり高かった上になかなか手に入らなかったのです。

電電公社が出来て急速に電話が引けるようになったのは、私が短大を卒業する頃だったでしょうか。
その頃から日本はどんどん発展して行き、街も活気づいてクリスマスイブの銀座などは車道にまで人があふれるくらいの賑やかさでした。

その勢いの頂点があのバブルの時代。
それが弾けてからの日本は現在に至るまで元気を取り戻せないままでいます。もう戦争を知らない世代の方が多くなった現代、戦後ももうとうの昔のことになってしまったので、私の戦中戦後の話もこの辺で終わりにしたいと思います。

長い間お付き合いいただきありがとうございました。
この後は佐藤愛子さんが書かれた「90歳、何がめでたい」をもじって「90歳、やはりメデたい」と題して、時々思ったことを書いて行きたいナ、と思っております。
よろしければ、またたまにお付き合いいただけたら嬉しいです。