2024年6月の現在の時点で放映されているNHKの朝の連続ドラマ「虎と翼」は日本で初の女性弁護士となった実在の人物をモデルにした物語です。
彼女と大学で同期だった男性が裁判官となり、その生真面目さから闇米を買うことを拒否して餓死する話は実話で、当時中学1年生だった私も知っているくらいセンセーショナルな出来事でした。

配給のお米だけではとても生きて行けない時代に、法律を守る立場の人間として職務に忠実だったその判事の生き方に賛否両論があったことは当然でした。
ドラマでは家庭裁判所設立準備中の1948年の出来事としてあるので、時系列的にはちょっとズレがありますが。

私の母も知り合いの農家へ大きなリュックを背負って通っていました。
しかし帰りの電車に警官が乗り込んで来ると摘発が始まります。
急いで電車の窓から外へリュックを放り投げる人が大勢いたそうです。
あとで取りに戻って無事手に出来たのでしょうか。
それとも沿線に住む人たちに拾われてしまったのでしょうか。

捕まった人たちは、大事な着物などと交換してようやく手に入れて来たお米を没収されどんなに悔しかったことでしょう。
私は子どもながら、その没収したお米はどこへ行くのかしら?
と、思っていました。
配給に回されたのならいいですが、警察関係者や政治家などの口に入っていたかもしれない、と世の中の汚れをいろいろ知った今の私は、そんな勘繰りをしています。

戦争と凶作が重なったという戦後の2年間がいちばんひどい食糧難の時期だったようです。
その頃配給されていた主食代わりになるものは、フスマ(小麦の皮)、コーリャン(お米のような形の赤い穀物)、トウモロコシの粉などでした。どれも動物の飼料になるものです。

トウモロコシの粉にわずかな小麦粉を混ぜてお団子にして蒸したものや、バサバサのフスマなどいくらお腹が空いていても美味しいとは思いませんでした。

小麦粉が配給になるようになってからは家庭でのパン焼き機なるものが売られていて、うちにもありました。(もちろんパン屋を始める前の話です)
長方形の木の箱の内側2面に銅か何かの金属の板が貼られているもので、そこへふくらし粉か何かを入れてこねた小麦粉を入れて電気を通すのです。

戦後の面白い道具としては、「タバコ巻き機」があります。
「モク拾い」という職業?があって、道路に捨てられたタバコの吸い殻を拾い集めてそれをほぐし、中身をその道具で紙に巻いて1本のタバコに再生して売るのです。
紙にはもっぱら英和辞書の紙が使われていました。

棒の先に針をつけて、吸い殻を突き刺しては拾っているおじさんをよく見かけたものです。

もっと後になって絹のストッキングが売られるようになると、その「デンセン」と呼ばれるホツレを修理する仕事がありました。
一か所糸が切れるとそれがツーッと伝染してしまうので、それを器用に特殊な針を使って元通りに修復する仕事です。
修理代は1本10円でした。
タバコ屋さんなどでよく受け付けていました。器用な女の人の内職になっていたようです。

これはナイロンが出来て安くストッキングが買える時代になって自然消滅しました。