私の父も母も大の映画好きだったので、毎週のように一緒に映画館へ行っていました。
うちの横の道を真っ直ぐ南の方へ、途中築地に続く市場通り、次に昭和通りという大通りをわたって行くと銀座1丁目に出て、右角に「テアトル銀座」という映画館がありました。

そこまで約1キロの道を何度も3人で歩いて行った楽しい思い出があります。
その頃の映画館は入れ替え無しなので、途中から観るのが普通でした。
結末を先に見てしまうわけですが、そんなことお構いなしでしたね。
いつも超満員なので立ち見でしたが、終わると帰る人がいますから途中からは必ず座ることが出来るのです。

この映画館で見た「セントメリーの鐘」でのイングリッド・バーグマンの美しさに圧倒され、私はずっとバーグマンのファンでした。
フレッド・アステアとジンジャー・ロジャースの「〇〇夫妻」というシリーズも欠かさず見に行きました。

その後何十年経ってもアステアに匹敵する踊り手はこの世に現れません。
今のダンスは確かにキレッキレッでカッコいいかも知れませんが、「魅了」される感覚にはなりません。
アステアはダンスの技術だけではなく、歌も演技も1流。そして身についた品の良さと優雅さ、暖かさとユーモアはほかの誰も持っていないものでした。
今の若い人たちにぜひ「イースターパレード」という映画を観てほしいです。そこに登場するドナルド・オコーナーもひょうきんで素晴らしいです。彼は「略奪された7人の花嫁」というミュージカル映画でも活躍しています。
ビング・クロスビーとボブ・ホープの「腰抜け二丁拳銃」などの腰抜けシリーズ、ディーン・マーティン&ジェリー・ルイスの「凸凹コンビ」シリーズにはおなかを抱えて笑いました。

「風と共に去りぬ」は日本で公開されたのは戦後数年経ってからですが、戦争前にはもうアメリカでは出来上がっていて、終戦の年にアメリカで見たという新聞記者の方の文章を読みました。
もっと驚いたのは戦時中、中野学校で全員に見せたという記事です。
その時の題名は「風ト共ニ去リヌ」と当時風にカタカナになっていたそうです。
敵国アメリカ研究のために見せたのでしょうか。
戦争中にこんな映画が作れる国に敵うわけがないと、そこで戦争をやめてくれていたらよかったのに、と思ったものです。