(長く綴って参りましたこのブログは「出なくなった声」が出るようになった今回で終わりになります。お読みいただいた皆様ありがとうございました。新しいシリーズは来年90歳になるのを記念して、戦前から戦後までの覚えていることを詳しく書いて行きたいと思っております)



今日は入院最終日。
明日は家に帰れることになりましたが、なぜかこの1週間は夏の入院の時の1か月よりとても長く感じました。

歳をとると目が見えなくなったり耳が聞こえなくなったり、歩けなくなったりはよく聞く話ですが、私のように声が出なくなるという症状はあまり聞いたことがないので、ちょっとここでこれまでの経過をまとめてみます。(すみません。少し長くなります)

まず最初に声の変調を感じたのは昨年の1月29日のことでした。
何となく喉が詰まるような感じがして咳ばらいばかりしていました。
一時的なことだろうとあまり気にもかけずにいたのですが、1ケ月近くなっても変わらないので、きっと喉に何かが起きていると思い近所の耳鼻咽喉科を受診しました。

鼻から入れたカメラの映像を見ると左側の声帯はスッスッと動くのに右側の動きが鈍く、少し隙間が出来ています。
医者は首をかしげながら何も言いません。

映像で右に見えるということは、実際は左の声帯ではないかと思ったとたんに、20年も前からある外からも分かる左の甲状腺の腫瘍が気になりました。(これは穿刺検査でいつも「良性」と言われていました)



そこで去ろうとしていた医者を呼び止めて「先生、この腫瘍と関係があるんじゃないでしょうか?」と言うと、改めてもう一度診察をし、「そうだね。一度検査をするといい」と言って、県内の大学病院への紹介状を書いてくれました。

さっそくその病院に予約を入れて検査に行ったのが3月の初め。
まだその頃は少し声が変わってはいましたが、出にくいほどではありませんでした。
血液検査、CTとエコー、針を刺しての組織検査をして、結果を聞きの行ったのが3週間後。(WBC準決勝の日)

組織は「良性」だが、肺に小さな転移がいくつかあるので一部が「悪性」になっていると思われる。若ければ手術をするところだが年齢から考えてかなり負担が大きいと思うのでおすすめしません、というのが医師の判断でした。
とりあえず注射するくらいしかないので3か月後にまたいらっしゃい、と言われ帰って来ました。

その頃たまたま久しぶりに会った歌をお仕事にしているのんちゃんという若いお友達から、東京には声の専門病院があるという話を聞き、ネットで調べたら同じ系列の病院が福岡にもあって、そこには「音声・嚥下センター」という部門があることがわかりました。(これが6月半ば)

大学病院へ行ったらそこへの紹介状を書いて頂こうと決めて、注射とやらを受けに行きましたが、先生は「え?注射?」とお忘れでただの診察だけでした。
そこで紹介状をお願いすると、先生は「そこでの診立ても変わらないと思いますよ」と言いながらも紹介状は書いてくれました。

するとその数日後、4年前に今の所に越して来てから親しくなったお友達、Nさんからの「甲状腺なら日本で1,2の病院が別府にありますよ」との貴重な情報。聞けば美智子上皇后も受診されたことがあるとか。
そこで手術をしてもらおうと、すぐさま電話しました。
そして福岡の病院はキャンセルして、そこへの紹介状をそのまま持って行き、8月に入院と手術が決まったのです。

結果は外からも見えていた左の甲状腺の腫瘍は3.6mm。1部が「甲状腺濾胞癌」で全摘、右は全く外からは分からないのに4.5mmの腫瘍が出来ていたそうで、こちらもほとんど摘出しました。
結局この癌が声帯を動かす神経を巻き込んでいたのです。

4月末までは少し声が変でもかなり大きな声が出せていたのでこの頃に手術していたら、と思うのは、愚痴になりますね。

術後3週間の受診の時、改めて福岡の「音声・嚥下センター」へ行きたいと思い、紹介状を書いていただき今回の入院となったわけです。
一時はあきらめていた声を、まさか取り戻せるとは思っていなかったので本当に嬉しいです。

自分のお腹の脂肪を声帯に付けて隙間を埋めることが出来るなんて、恐らくほとんどの方がご存知ないと思うので、何かの参考になればとここにご報告させて頂いた次第です。
想像もつかなかった外科医学の進歩に感謝です。

しかし、これまでお世話になった内科、耳鼻咽喉科の先生方が、外からもはっきりわかる甲状腺の腫瘍については何のコメントもなかったことが残念でなりません。
ただ88歳という「年齢」だけで腫瘍の手術は無理、と言われたわけですが、私にとってはどうということもない、体力も全く消耗しない手術でした。

甲状腺の腫瘍は、細い針による穿刺検査だけでは良性悪性の判断は困難だそうですし、ましてCTやエコーでは分からないそうです。
摘出しても後は薬でカバーすることが出来るので、腫瘍があったら私のような余病が出る前に手術をした方がいいのではないかと思います。(知り合いの方が現に最近手術をしたらやはり癌になっていたそうです)

結果として、もし友人二人からの情報がなければ今でも出ない声を振り絞って体力を消耗し、不自由な日常生活を送っていたことでしょうから、本当に有難かったと思います。

のんちゃん、Nさん、助けて頂き本当に有難うございました。
今これを書きながら涙が出て来ています。