2年ほど前から毎朝朝食の後夫と二人で「心の扉を開く」のその日のページを読み、簡単なシェアリングをした後、「日本文学全集」30巻(池澤夏樹個人編集・河出新社)のどれか一冊を数ページずつ読むことにしています。

一冊が5センチもあるような分厚い本も、毎日少しずつ読むことでいつのまにか読み進むことが出来て、今はもう10冊目の「平家物語」。一人だったらとうてい読めない分量です。

いよいよ最終章に入り、8歳の安徳天皇が祖母であり、清盛の未亡人である二位の尼に抱かれて、三種の神器と共に壇ノ浦で入水するところまで来ました。

悪行の限りを尽くした清盛の死後は次第に平家は力を失うようになり、先ず木曽義仲に四国の屋島にまで追われます。
今度はその木曽義仲が謀反と讒言されて源氏の総大将頼朝やその弟である義経に討たれ、一度に150とか200もの首がさらされるなんて場面も登場します。

義経はどちらかと言えば悲劇のヒーローのように扱われていますが、実はかなり冷酷で残虐なところもあったようです。
平家は歌舞音曲に秀でてはいても、戦いとなると関東武士には敵いません。
源氏勢が勝利し、この後武家社会へと時代は移って行き、武士道がもてはやされるようになるわけです。

主君のために死ぬことが名誉で、それが武士の美学だとか何とか言いますが、(私個人としては)ひとつも美しいなんて思えません。切腹なんて特に。
女は抜きの男社会の価値観ですね。

つくづく日本の男は(世界中かもしれませんが)戦争が好きなんだなあ、と思いますよ。男の子は小さい頃からチャンバラ大好きですものね。今はそれにピストルやマシンガンごっこが加わるんでしょうか。

忠臣蔵や敵討ちの話は何度も芝居や映画になり、未だに人気が衰えません。
うちの夫もそうですが、みんな時代劇が大好き。人をバッタバッタと切り殺すシーンが大好きなんですね。

それが戦時中の特攻の精神にも通じるのでしょうね。
当時は私も軍国少女だったので、その勇ましさをカッコイイと思っていましたけれど。

平安朝から武士の世界に移っても女性はいつも陰の存在でしかありません。家来の奥方でも気に入った女があれば召しださせたり、有無を言わさず子どもを産ませられ、それが次期天皇にでもなれば「国母」と言われて地位が上がりますが、まるで感情も心も無視された道具でしかないのです。

私の先祖も源氏の流れをくむ武将ですが、武家に生まれた女は家系図にもただ「女」とだけで名前は記されません。たまに目立ったことをしたり、悲劇的だった女性だけが小説やお芝居に名を残していますが、ほとんどが跡継ぎを産むためだけのような扱いを受けています。

男社会が続く限り、その伝統はこれからもずっと続いて行くのでしょうね。