胸の中の どこかにある 命の記憶を 呼び起こして
ことばに織って
だれかに残していこう
一心不乱に母は 私を育てました
寝食を忘れて母は 私を育てました
生きていてくれさえすればなんでもいいの
その熱は わたしの心にも刻まれています
幼い日の はしかの日の ものすごい熱とともに
覚えています
死が天井で見ていて
酸素テントの中の
鼻先のここまできたので
にらめっこをしました
負けるものかと思った
忘れたのではなくて
おとなになれば言わない
今となれば宝箱の中身
よろこびも悲しみも死にふれる直前の恐怖も
20年くらいが経って
生きる糧になりました
わたしのことばを残す相手方は
我が子ではないかもしれないけれど
この世の中にたったひとりでも今日の今
泣いているお母さんと子がいたら
届けばいいなあ
生きてさえいれば
笑える日が来るからね
だれに何を言われようが思われようが
生きていればいいんだからね
ふくしまの人が
医者を断られました
ふくしまの人が
バス乗車を断られました
なんと信じがたいような 人のこころのありよう
障害者の私は
昔よくバス乗車を断られました
車いすを見たことがないのか
近年でもアパートを断られます
きのうまで「ふつう」の中にいた人達が
歩けるのに
結婚ができないとか言われてしまう
人よりも苦労した人が まだ苦しむの?
なんなんだこれは?
と
怒っているあいだにも
どこかで事態が悪くなってしまう
けれど
事故や病気や災害を乗り越えた人達は
それらからの「生き残り」なんだから
生き残りには生き残りの
この世での使命があるはず
あなただけの心にある 命の言葉と 綴る文字
ぜんぶ書いて
だれかに渡してからいこう
わたしは
あなたに渡してからいこう