住まいの近くに病院があります。

いつもは気にかけないのですが、正面に大きな自動ドアの

出入り口があり、

左端の方に、間口半間程の目立たないドアがあります。


昔、違う町の病院で義母が亡くなった時、地下の霊安室に運ばれ、

ある程度の時間になったら、葬儀屋さんがストレッチャーに移して、

小さな出口に車のお尻を向けて待っている葬儀屋さん差し向けの

車に、手際よく移しかえられた事があったことを思い出しました。


近くの病院は老人が多く、しょっちゅう、その小さな無味乾燥の

出口から出されていくんだなあ。


正面の広くピカピカのガラスの自動ドアから入り、亡くなったら

さみしいドアから、人目につかぬよう、ひっそり、こっそり

と出されます。


死は忌み嫌われ、まだ生きている患者さんや関係者に

気づかれないよう配慮がなされます。


亡くなって、病院を去る時には、きれいな花に飾られた

じゅうたんの上を静かに、厳粛に運ばれ、出口も広いドアで

きれいで、花祭りの時の様な可愛い飾りの車に乗せられて、

懐かしい我が家へ。


もう死んだ人間にかかわれるだけの時間の余裕のない、病院

関係者にとって、死者は早くお引き取り願いたい物体でしか

ありません。


その後のお葬式までの段どりはまあ、厳粛に運ばれはしますが。


死者にとっての第一歩が地下の閉ざされた霊安室ではなく、

もっと明るいきれいな部屋で、あわただしく追い出されるのではなく

少し悲しみと向き合い、ちょっと余裕のできる時間があったら。


そんな風な対応の出来る病院があったら繁盛すると思いますが。

どうでしょうか。

却って目立って、しょっちゅうあの病院は死者が出ると思われるかな。


老人の多い病院なら、死者をも大切に接してくれる病院には

遺族が第一段階で癒されると思うのですが。