さちとマスターがやり取りをしている間、佑樹はずっと考え込んでいた。
「そもそも、ボクは何がしたくてフリースクールをつくろうと思ったんだろう」
独り言をブツブツと口にする。が、明確な答えが浮かばない。自分が学校に行けなくなった体験からそう思ったのは間違いない。が、本当にそれだけなのだろうか。もっと大きな意義を持たせるべきじゃないか。
「佑樹はどう思うんだよ?」
不意にさちからそう言われて我に返った。
「あ、え、な、なんのこと?」
「いや、だからさ、引きこもりの人がどうなったら救済できたことになるのかってこと」
さちの言葉に、佑樹は大きな違和感を感じた。
「あれ、そもそも引きこもりの人たちを救済しなきゃいけないんだっけ?」
「えっ、そうじゃないの?」
「いや、なんか『救済』って言葉にすごく違和感を感じたんだ。それって『あなた達を助けてあげます』って、上から目線のような気がしてさ」
「そう言われりゃそんな感じもするなぁ。じゃぁ、なんて言えばいいんだ?」
さちも急に考え始めた。そのとき、マスターは黙ってコーヒーを淹れる準備を始めた。
二人が腕を組んでウンウンうなりながら考えている最中はあえて言葉をかけないマスター。
〜おしらせ〜
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