「もっと笑顔になりなさい」
聡子の脳裏に浮かんだ言葉がこれだった。そしてその言葉を発してくれたのは…
「礼子…さん?」
思わず口にする聡子。
「礼子さんが思い浮かんだのか?」
貴利がそう尋ねる。ここで聡子はハッと我に返る。
「うん、今このコーヒーを飲んだら、礼子さんが私に話しかけてくれたの。もっと笑顔になりなさいって」
今浮かんだ光景をもう一度思い出しながらそう語る聡子。
「奥様の頭の中で母がそう語ったのですね。それが今欲しい答なんです」
「欲しい答?」
「はい。シェリー・ブレンドは今その人が欲しいと思っているものの味がします。人によってはその光景が頭の中に浮かんでくる人もいます」
「じゃぁ、私はもっと笑顔になりたいって思っているってこと?」
「おそらく。何か思い浮かぶことってありますか?」
聡子はマスターからそう言われて、もう一度礼子さんのことを思い出した。
「そういえば礼子さんって、私達の話をいつもにこやかな笑顔で聞いてくれていた。だから何でも安心して話ができたの。この人なら何でも話せるって、そう思った。でも今の私って、そんなふうにはなれていない。下手をするときつい顔して人の話を聞いてた気がする…」
〜おしらせ〜
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