「お二人ともいい笑顔していますよ」
今まで様子を見ていたのりこがそう声をかけた。
「ありがとうございます。なんだかとても気持ちがいいです。綺咲、これからもよろしくね」
「うん、あらためてよろしく」
二人は握手を交わしてほほえみあった。
「ところで、このコーヒーってどうやって魔法がかかるようになるんですか?私もこんなコーヒーを淹れてみたいなぁ」
「あら、妃美子ってコーヒー淹れるの?私もコーヒーにはうるさいから、指導してあげるわよ。この前だって会社でお客様に淹れたコーヒーが好評でね。きみの淹れたコーヒーは特別に美味しいねって言われたのよ。だから妃美子にもコーヒーの淹れ方を教えてあげるね」
言った先からコーヒーについてマウントをとりにくる綺咲。どうやら自分では気づいていないようだ。だが、妃美子はそんな綺咲をいじらしく見ている。
「これからゆっくりと、綺咲を教育していくしかないな」
心のなかでそう思いながらも、にこやかに綺咲の話に耳を傾ける。
カフェ・シェリーで過ぎていく時間。それはただの時間ではない。シェリー・ブレンドを飲み交わした人たちがたくさんの気づきを得て、新しい人生を歩んでいく。それがカフェ・シェリー。
<第9話 完>
〜おしらせ〜
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