友永の頭の中では、社長が言われたような感じで設計図面を納品する場面が描かれていた。こちらが提示した締切よりも早く納品する。するとお客様は喜ぶ。しかし実際のところは、今までの期日通りの仕事をしているだけ。これなら設計スタッフに無理をさせることはない。つまり、自分が出しゃばらなくても仕事がうまく回せる、ということだ。
「社長、わかりました。それでいきましょう。そうしていただけると、俺が信一くんを指導する時間も取れることになりますね」
「うん、そうしてくれ。信一は生意気な態度をとってしまっているのだろうが、実のところ設計の腕はそれなりにあると思っているんだ。学生時代にデザインコンテストで賞をとったこともあるんだから」
「えっ、そうなんですか?それは知らなかったですよ。信一くん、海外にいた頃の自慢話はよくするけど、学生時代の話なんてそんなにしなかったからなぁ」
「そうなのか?てっきりあのコンテストの話を自慢しているのだと思っていたが」
そうか、信一の設計に対しての自信はどこから来ているのかと思っていたら、そういうことがあったのか。友永はこれで理解できた。けれど、それを自慢しないのは不思議であった。
〜おしらせ〜
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