Cafe Shelly next 第5話 貯金はいかほど? その29 | 【小説】Cafe Shelly next

【小説】Cafe Shelly next

喫茶店、Cafe Shelly。
ここで出される魔法のコーヒー、シェリー・ブレンド。
このコーヒーを飲んだ人は、今自分が欲しいと思っているものの味がする。
このコーヒーを飲むことにより、人生の転機が訪れる人がたくさんいる。

 夫から、最近なんだか明るくなったなって言われた。そのおかげか、私も夫に対してなんだか優しく接することができてきた気がする。

 

 買い物に行っても、八百屋のおじさんから「おまけしておくよ」なんて初めて言われたし。笑顔になるってことも信頼貯金を増やす方法のひとつなんだなって感じた。

 

 そうして今、私は飯山さんとカフェ・シェリーにいる。

 

「いらっしゃいませ。今日はちょっと混んでいるのでカウンターでよろしいですか?」

 

 店員さんから総案内をされた。以前の私だったら、ここでムッとしていたかもしれない。私の頭の中では、前と同じ窓際の席で飯山さんと一緒にコーヒーを飲むというイメージを持っていたから。

 

 けれど今は違う。

 

「そうね、よく考えたらカウンターでコーヒーを飲むのって初めてだから、それもおもしろそう」

 

 そう言えるようになった。私自身がそう思えるようになったという変化を楽しめることに驚いている。

 

「さくらさん、いらっしゃいませ」

 

 なんと、このお店のマスターから名前で呼ばれたのにはびっくりだった。よく考えたら、マスターとこうやって対面して話をするのは初めてだ。

 

「へぇ、さくらさんってこのお店の常連さんなの?なんだかステキね」

 

〜おしらせ〜
Cafe Shelly第1部、全120話のバックナンバーはこちらで読むことができます
https://ncode.syosetu.com/s5786f/