洋貴の目は宙を仰いでいた。過ぎ去ったことを悔やむな、そう言われても頭の中はまみと過ごした短かった日々のことが思い出されていたからだ。
「一瞬で恋に落ち、一瞬で恋が終わる。でも、オレの心の中ではこの先もずっと、まみさんが居座り続けるんだろうな。おそらく一生」
「私はそれでいいと思いますよ。それが私達、男の生き方なんでしょうから」
「そうですね。思えばわずか10日間の恋だったなぁ。でも、この10日間は今までにない恋愛経験をさせていただきました。それも、このカフェ・シェリーに来たおかげです。マスター、ありがとうございます」
「いえ、こちらこそ余計なことをしてしまったかもしれませんが。ひろさんがそう思っていただけるのなら、私としてもありがたいですよ」
「おっと、おしゃべりに夢中で注文していなかったですね。じゃぁ、シェリー・ブレンドをお願いします。それと、朝ごはん食べてなかったんですよね。まだモーニングってできますか?」
「はい、今日はのりちゃんがいないから、男のサンドイッチですけど」
「それもいいですね。じゃぁいただきます」
マスターはモーニングとコーヒーを淹れる準備にとりかかった。洋貴はそれを眺めている。
〜おしらせ〜
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