カラン・コロン・カラン
心地よいカウベルの音。お客様がいらした合図である。
「いらっしゃいませ」
マスターはこの音が鳴ると、すぐに言葉が反応するようになってきた。これはどんな作業をしていても、反射的にそう言葉がでるような習慣になっているのだ。
「あの…ここに魔法のコーヒーがあると聞いてきたんですけど」
入り口に立っているのは、三十代くらいの女性。髪はショートボブでやわらかい雰囲気を持った小柄な方である。けれど、どこかおどおどしている印象がある。マスターはその女性を笑顔で迎え入れた。
「はい、ございますよ。窓際の席へどうぞ」
今日は常連客の隆史しかいなかったので、マスターはカウンターを出てメニューを持って女性のところへ行って席を案内した。忙しいときにはなかなかカウンターから離れることもできなくなるのが今のマスターの困りごとであった。
「こちらが魔法のコーヒー、シェリー・ブレンドです」
マスターはメニューを開いて女性に説明をする。
「じゃぁ、それを一つおねがいします」
その女性はどこか不思議な雰囲気も感じられる。それはなんなのか、今の時点ではマスターにはわからなかった。ただ、惹かれるものをマスターは感じていた。
〜おしらせ〜
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