Cafe Shelly next 第1話 独りじゃない その2 | 【小説】Cafe Shelly next

【小説】Cafe Shelly next

喫茶店、Cafe Shelly。
ここで出される魔法のコーヒー、シェリー・ブレンド。
このコーヒーを飲んだ人は、今自分が欲しいと思っているものの味がする。
このコーヒーを飲むことにより、人生の転機が訪れる人がたくさんいる。

「いらっしゃいませ」

 

 その声はコーヒーの香りとともに、訪れた人の心を刺激する。やさしく、そして深く心に染みる声。その空間に入ると、まるで別世界を訪れたような感覚を覚える。

 

 それがこのお店、Cafe Shelly。

 

 お店のつくりはとてもシンプル。白と茶色でまとめられた内装。壁には絵が飾ってある程度で、余計なものは目に入らない。お店にはじゃまにならない音量でジャズが流れている。

 

 窓際には半円型のテーブルがあり、そこには椅子が4脚。お店の真ん中には丸テーブルがあり、ここは三脚の椅子。そしてカウンターは四脚。十人も入れば満席となる小さな喫茶店だが、空間はさほど狭いとは感じない。それだけに落ち着いてここにいることができる。

 

 カウンターの向こうにはにこやかに笑うマスターがいる。このマスター、聞けばこの仕事を初めてまだ一ヶ月程度だというから驚きだ。もう何年もここに立っているといってもいいくらいの風格がある。

 

「ほんと、マスターもすっかりなじんじゃったよね」

 

 カウンターでコーヒーを飲んでいる常連客、文具屋の隆史は笑いながらコーヒーカップを片手にそう話している。

 

「おかげさまで。加藤さんを始めとしたみなさまのおかげです」