「いらっしゃいませ」
その声はコーヒーの香りとともに、訪れた人の心を刺激する。やさしく、そして深く心に染みる声。その空間に入ると、まるで別世界を訪れたような感覚を覚える。
それがこのお店、Cafe Shelly。
お店のつくりはとてもシンプル。白と茶色でまとめられた内装。壁には絵が飾ってある程度で、余計なものは目に入らない。お店にはじゃまにならない音量でジャズが流れている。
窓際には半円型のテーブルがあり、そこには椅子が4脚。お店の真ん中には丸テーブルがあり、ここは三脚の椅子。そしてカウンターは四脚。十人も入れば満席となる小さな喫茶店だが、空間はさほど狭いとは感じない。それだけに落ち着いてここにいることができる。
カウンターの向こうにはにこやかに笑うマスターがいる。このマスター、聞けばこの仕事を初めてまだ一ヶ月程度だというから驚きだ。もう何年もここに立っているといってもいいくらいの風格がある。
「ほんと、マスターもすっかりなじんじゃったよね」
カウンターでコーヒーを飲んでいる常連客、文具屋の隆史は笑いながらコーヒーカップを片手にそう話している。
「おかげさまで。加藤さんを始めとしたみなさまのおかげです」