第105話 届け、この想い その2 | 【小説】Cafe Shelly next

【小説】Cafe Shelly next

喫茶店、Cafe Shelly。
ここで出される魔法のコーヒー、シェリー・ブレンド。
このコーヒーを飲んだ人は、今自分が欲しいと思っているものの味がする。
このコーヒーを飲むことにより、人生の転機が訪れる人がたくさんいる。

 曲のイントロが流れる。今日の一曲目は元気な歌。こうして私のコンサートがスタートした。あとは無我夢中でステージをこなし、心地よい疲れが私を包み込んだ。

 

「かなちゃん、おつかれさま」

 

「とっても良いステージだったよ。サイコー!」

 

 コンサート終了後、たくさんの人が私にそうやって声をかけてくれる。そして、一人の男性が楽屋の前で私を待ってくれていた。あのたった二人だった熱烈なファンのうちの一人。小さな花束を持っている。

 

「かなさん、ありがとうございました。あいつも天国でとても喜んでくれていると思います」

 

 笑顔なのに泣きそうな顔をしている。私も、つい涙ぐんでしまった。

 

「塚原さん、いつも応援ありがとうございます。三宅さんも、きっと天国で喜んでくれていると思います」

 

 そう言って私はファンの男性、塚原さんから小さな花束を受け取る。今回、たくさんの花束をもらったが、これが何より一番うれしくて、そして一番価値のあるもの。なぜなら、この花束こそが私をここまで引き上げてくれた原動力だったからだ。

 

「はい、シェリー・ブレンドも持ってきました」

 

 塚原さんは水筒を私に差し出してくれた。これも忘れてはならないアイテムの一つだ。