第97話 握る手、離す手 その30 | 【小説】Cafe Shelly next

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喫茶店、Cafe Shelly。
ここで出される魔法のコーヒー、シェリー・ブレンド。
このコーヒーを飲んだ人は、今自分が欲しいと思っているものの味がする。
このコーヒーを飲むことにより、人生の転機が訪れる人がたくさんいる。

 旦那さん、満足げな顔をしている。物事の悩みって、執着したものを手放した時に生まれるものなんだな。

 

 握っておくべきものは握っておかないといけない。けれど、手放すものは手放すことも大切。捨てるからこそ生まれてくるものもある。このことを教えてくれたマイさん、そしてシェリー・ブレンド。本当に感謝しかない。

 

「ねぇ、お父さんは今どんなことを願っているのかな?」

 

 のりちゃんが突然そんなことを言い出した。

 

「えっ、オレの願い?えっとだなぁ…って、どうしてそんなことを聞くんだよ?」

 

「お父さんも一緒に、カフェ・シェリーに連れて行ったほうがいいのかなって思って」

 

「なんだよ、そのカフェ・シェリーってのは。えらくシャレた名前だけど」

 

「そこに行けば、自分の望んだものがわかるんだよ。そして、望んだものが手に入るんだ」

 

 のりちゃんのその言い方。ひょっとしたら…

 

「のりちゃん、彼氏できたの?」

 

「えへへ、おばちゃん、わかる?」

 

 あ、やっぱり。

 

「おいおい、お前彼氏ができたのか!そいつ、一度連れてこい。おまえにふさわしいか、ちゃんと見てやるからよ!」

 

 旦那さん、急に興奮し始めた。のりちゃんに対しての執着も捨ててもらったほうがいいかもね。

 

<第97話 完>