第94話 小さな約束 その31 | 【小説】Cafe Shelly next

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喫茶店、Cafe Shelly。
ここで出される魔法のコーヒー、シェリー・ブレンド。
このコーヒーを飲んだ人は、今自分が欲しいと思っているものの味がする。
このコーヒーを飲むことにより、人生の転機が訪れる人がたくさんいる。

「部長、ひょっとしてそれって食べ物ですか?食べ物の恨みは恐ろしいですからねぇ」

 

 笑いながらそう言った。けれどこれも冗談ではない。こういった小さな約束をキチンと守らないと、上司としての信頼を失ってしまうことになる。

 

 ふとここでひらめいた。

 

「部長、羽賀さんのコーチングを個人で受けるなら、ちょっとおもしろいところがあるのですが」

 

「おもしろいところ?」

 

「はい、喫茶店なのですが、ここのコーヒーがちょっと変わっていまして。何がどう変わっているのかは体験してからのお楽しみです。部長なら間違いなく気に入りますよ。私がお約束します」

 

「谷川くん、その約束、ちゃんと守れるんだろうね?」

 

 部長、ニヤリと笑ってそう言う。

 

「もちろん、この約束はきちんと守れますよ」

 

 私もニヤリと笑ってそれに応えた。まるで悪代官と悪徳商人の会話だな。

 

「部長、羽賀さんへの連絡は私の方でやっておきます。よかったら今度その喫茶店にお連れしますね」

 

「あぁ、ありがとう」

 

 なんのことはない、私があのカフェ・シェリーに行ってみたいと思っているだけだ。そしてまたあの魔法のコーヒー、シェリーブレンドを飲んでみたい。今度はどんな体験をさせてくれるのかな。

 

<第94話 完>