高橋部長にもそんな時期があったのか。これは驚きだ。
「だからね、谷川くんにはそうなって欲しくないから羽賀くんにお願いをしたんだよ。そうしたら二つ返事で引き受けてくれた。さすが、羽賀くんはすごいね」
「そうだったのですね。私にご配慮いただきありがとうございます」
「いや、礼には及ばんよ。これに気づかせてくれたのも羽賀くんだからね」
「気づかせてくれた?」
「あぁ、私は月に二回ほど羽賀くんのコーチングを受けているのだが。そのときに自分の過去のことを思い出して、我が社にそんな社員をつくらせてはいけないという話になってね。このときに羽賀くんが『社員だけでいいのですか?』と質問してきたんだよ。このときに真っ先に谷川くん、君の顔が浮かんでね」
どうして私の顔が思い浮かんだのだろう。その理由はすぐにわかった。
「広告代理店といえば、大手で大変な問題が起きただろう。君のところはそんなことはないとは思うが、思い出してみれば私たちは君のことを便利屋のように扱ってきた気がする。そのことを改めさせられたのだよ」
「ありがとうございます。おかげで私は大きなことに気づかされました」
「ほう、どんなことだい?ぜひ聞かせてほしいな」