「おっと、もうこんな時間だ。そろそろ次の約束がありますので」
「そうですね、先約優先ですから、遅れないように気をつけて。いってらっしゃい」
「はい、ありがとうございます。また連絡させていただきます。あ、今日のお代は」
「今日はけっこうです。ボクこそ楽しませていただきましたから。ではまたのご連絡をお待ちしています」
また連絡します。一見すると社交辞令的な言葉だが、こういうことこそ約束として守らねば。羽賀さんのコーチング、これは石橋部長が言われていたとおり効果があったな。
その効果のおかげなのか、次の訪問先ではいい感じの受注をいただけそうな感じだ。よし、今度は家庭だな。今日は早く帰れそうなので、久しぶりに一家で食事をするか。そのつもりで家に電話をかけた。
「あら、めずらしいわね。じゃぁごちそう作って待ってるから」
妻にそう言われて、私も晩御飯が楽しみになってきた。そうして社に戻り報告をする。ついでに石橋部長からコーチの羽賀さんを紹介されたことを伝えた。
「ほう、コーチングか。聞いたことはあるな。一度その羽賀さんとやらにお会いしてみたいものだ」
部長は結構乗り気なようだ。これは社に導入できるかもしれない。