第88話 これもまた、運命 その15 | 【小説】Cafe Shelly next

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喫茶店、Cafe Shelly。
ここで出される魔法のコーヒー、シェリー・ブレンド。
このコーヒーを飲んだ人は、今自分が欲しいと思っているものの味がする。
このコーヒーを飲むことにより、人生の転機が訪れる人がたくさんいる。

「運命、ですか。それって人生を諦めているってことにならないですか?」 

 

 佐伯先生、真剣な顔で私にそう言う。私はなにも人生を諦めているわけではない。けれど、運命として変えることができないものは仕方ないではないか。妻が死んでしまったのも運命、転勤を命じられたのも運命、朝礼を変えようとしないスタッフがいることも運命。何が変えられるというのだ。 

 

「あの、差し出がましいと思うのですが。そちらの方、えっと山鹿さんでしたっけ。よかったらもう一度、シェリーブレンドを口にしてみませんか?」 

 

「えっ、どうしてですか?」 

 

「このシェリーブレンドは、飲んだ人が望んでいる味がするんです。さきほどの爆発というのも、山鹿さんが望んだことを現しています。今一度、自分が望んでいるものを確認してみてはいかがですか?」 

 

 自分が望んでいる味がするだと。そんな馬鹿なと思いつつ、とりあえず言われたとおりにしてみることにした。 

 

 コーヒーに口をつける。なんだ、ただのコーヒーじゃないか。だが、その味がすぐに変化し始めた。さっきは感じなかった甘みがする。まさかと思い、もう一口飲むと、今度は苦味と酸味が強く感じられる。これはどういうことだ?