第86話 今、そのとき その23 | 【小説】Cafe Shelly next

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喫茶店、Cafe Shelly。
ここで出される魔法のコーヒー、シェリー・ブレンド。
このコーヒーを飲んだ人は、今自分が欲しいと思っているものの味がする。
このコーヒーを飲むことにより、人生の転機が訪れる人がたくさんいる。

 コーヒーとクッキーの甘みがうまくブレンドして、さらに黒ごまの香りが鼻の奥をいい感じで刺激する。こいつはうまい!  

 

 そう思った瞬間、オレの頭にはある光景が浮かんでいた。  

 

 朝早く起きて、身支度が済んだら原稿に向かう。そしてやるべきことを確認したらすぐに動く。さらに、思いついたことはすぐにメモを取り、それをもとに新しいネタをつくりだす。

 

  あれ、どうしてオレはこんなにテキパキと動いているんだ。そのとき、まだ見知らぬ若い男がオレに近寄りこう言う。

 

 「先生、今度の原稿はこれでいきましょう」

 

  先生ってオレのことか?

 

  ここで思い出した、若い頃の夢を。今はしがないライターをやっているが、オレは本来ノンフィクション作家を目指していた。世の中の理不尽なこと、少数派の思いを拾ってそれを世に出す。そうすることで、少数ではあるが困っている人がいるんだぞ、ということを多くの人に知ってもらい、制度改革を求めていく。

 

  これがオレの目指している姿だった。いつの間にそのことを忘れていたのだろう。

 

  そうなるためには、まずは自分の態度を見直さなければいけない。いつまでも今のようにぐうたらしていても、決してそんな姿にはなれない。