コーヒーとクッキーの甘みがうまくブレンドして、さらに黒ごまの香りが鼻の奥をいい感じで刺激する。こいつはうまい!
そう思った瞬間、オレの頭にはある光景が浮かんでいた。
朝早く起きて、身支度が済んだら原稿に向かう。そしてやるべきことを確認したらすぐに動く。さらに、思いついたことはすぐにメモを取り、それをもとに新しいネタをつくりだす。
あれ、どうしてオレはこんなにテキパキと動いているんだ。そのとき、まだ見知らぬ若い男がオレに近寄りこう言う。
「先生、今度の原稿はこれでいきましょう」
先生ってオレのことか?
ここで思い出した、若い頃の夢を。今はしがないライターをやっているが、オレは本来ノンフィクション作家を目指していた。世の中の理不尽なこと、少数派の思いを拾ってそれを世に出す。そうすることで、少数ではあるが困っている人がいるんだぞ、ということを多くの人に知ってもらい、制度改革を求めていく。
これがオレの目指している姿だった。いつの間にそのことを忘れていたのだろう。
そうなるためには、まずは自分の態度を見直さなければいけない。いつまでも今のようにぐうたらしていても、決してそんな姿にはなれない。