2023年ももうすぐ終わりますね。
1年を振り返って
なんてことは書けません
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夏以前のことは
暑さで脳が溶けて思い出せない…。
記録に残っていることだけ
今年読んだ本は56冊
60歳のときの半分になりましたが
ゆっくりじっくり読んだ
ということにして良しとします。
ここにも何冊かの感想を書きましたが
それ以外に心に残った本を5冊
悲しみの秘義 若松 英輔
絶望的なつらく悲しい経験をした直後は、その悲しみとどう向き合えばいいのか、答えを求めて似たような経験をした作者の本だけを読んでいました。
答えをさがしながらときを経て、この本に出会いました。
作者自身も妻を亡くした喪失感に苛まれる中、宮沢賢治、須賀敦子、リルケなどたくさんの著名人の言葉に出会い、書き写し、生きる意味を考えさせられたとありました。
『悲しみを通じてしか開かない扉がある』
扉の向こうに続く道。その道を歩くために、この本の言葉たちは確かな道しるべとなってくれます。
その言葉の意味を噛みしめながら、でも言葉ではなく行動で、周りの人の悲しみにも寄り添って行けたらと思わされました。
26編のエッセイの中には、以前に読んだ「苦海浄土」の母の悲しみの章もありました。
その悲しみの中には、娘への愛とチッソへの怒り、人生の虚しさ、やりきれなさ、願い、ありとあらゆる思いがありました。
『人が語ろうとするのは、伝えたい何かがあるからであるよりも、言葉では伝えきれないことが、胸にあるのを感じているからだろう。言葉にならないことで全身が満たされたとき人は、言葉との関係をもっとも深めるのではないだろうか。』
言葉は書かれて完成ではなく、読まれて、それぞれが考えてこその作品だとありました。読むことも創作活動だと。
ときを経て読むと、また感じることも変わってくるかもしれません。
沖潤子さんの刺繍の静かな強さにも胸をうたれました。
地名の原景 木村 紀子
単純に「地形=原景」と解釈して読み始めたのですが、漢字が渡来する以前、『声だけが響いていた時代』に生まれた呼び方から説明が始まります。
人々がどんな場所をノ(野)、ヤマ(山)ハラ、シマと呼んでいたのか、それらが長いときを経、漢字を得てどのように変化したのか。
万葉集などの古典に登場する数多くの地名を取り出して比較考察し、わかりやすく説いています。
まるで神話の時代の人々が近くで生きているかように具体的で、ロマンさえ感じる研究書でした。
「好字」という言葉を初めて知ったのですが、地名に限らず、人々が言葉や文字に力があると信じ、祈りを込めて使っていたことがわかります。
村田エフェンディ 梨木 香歩
梨木さんの国境を越えた世界観、おおらかな宗教観、そして遠い昔から今に繋がる地球の息づかいを感じさせる表現が好きです。
19世紀末の、トルコに留学した村田とヨーロッパから来ていた若者たちとの交流が描かれています。
彼らの会話の中で、村田が仏教とはどういう教えだと問われるシーンがあります。村田(梨木さん)の答えは『慈悲』。いい言葉だと思いました。
西洋と東洋の架け橋となっていたトルコの様子や、登場する人々の互いを尊重し合う考え方がとても心地よくて、おもしろく読み進めていたのですが。
最後の方で重く苦しい現実を突きつけられ、村田といっしょに泣いてしまいました。戦争はいつも大切なものを奪っていきます。人間の最大の愚かさ。
遠くトルコから届けられた鸚鵡の発した言葉、『友よ』。村田と彼が出会った人々の思いを表すこれ以上の言葉はありません。
『私は人間である。およそ人間に関わることで私に無縁なことは一つもない』
1968年、文化人類学者の友人畑中幸子に誘われてニューギニアを訪れた作者の、想像を絶する過酷さを描いた紀行&滞在記。
フォローしている方のブログで知った本です。
一行目から文の上手さに惹き付けられました。命の危機と言ってもいいほどの大変なできごとに何度も遭遇するので、読む方も真剣にとは思うのですが、あまりにもおかしくて吹き出してしまう場面もたくさん。関西弁の女二人の会話が本音だらけで最強です。
深く考えずに行ってしまった作者もすごいけど、未開の地に女一人で住んでいる畑中さんはすごすぎます。帰国してからのマラリア発症の場面が一番怖かったような気がします。
非 色 有吉 佐和子
フィクションで、しかも戦後の米兵と日本人女性の結婚から始まる物語なのに、目の前で今起きている現実を見せつけられているような重く力のある作品でした。
『非色』色に非ず。皮膚の色が差別の要因の中で一番大きな比重を占めていますが、人は同じ色の中でも差別の種を見つけます。人種、出身国、教養、職業。 何より強いのが、使う側と使われる側の差。
性別も大きな要因ですが、この作品では、むしろ女性の方がたくましく賢明に描かれています。
主人公笑子が差別から逃げず、差別される側で生きていくと決めた強さに、
「差別をしない生き方」
というのはこういうことなんだと胸を突かれました。