『苦海浄土』は石牟礼道子さんの著書ですが、この「苦海」と「浄土」という言葉だけでも圧倒されるものがありました。


水俣病を患者側から、また国の組織への提言を書かれた本で、水俣病問題だけではなく、いのちに対しての事実の奥にある真実を、全ての人に対して提言しているように思いました。


到底、誰しもがこの本について批評などできないのではないかと感じており、私も感想すらはばかられる思いでいます。


水俣病という高度成長期の社会問題でありましたが、それは一つの象徴で同じようなことが今も起きています。
原発もその一つかもしれません。
何も変わっていないともいえるし、変わっていく希望もあると思っています。


全てのことに言えますが、起こったことの善悪の議論ではなく、その後、どう考えていくのか、そこを一人一人に問われているように思います。

かつて、病いに対しての憂いより、声が届かないことが闇でした。

起こった出来事に対しては、やがて人は受け入れていきます。
それだけの強さと許しを持っています。
許すことができないこともあるでしょうが、人はやがて許すところにいきます。

それでもなお、声が届かないのは、それこそが闇と言えます。


闇の中からは、かすかな光でも見出すことができます。
その光こそが生きる希望でした。
それは直接的な解決というより、まずは肯定、受け入れの心だったりします。



「風の谷のナウシカ」の原作の最後の言葉、

『いのちは闇の中のまたたく光だ』

というのを思い出しました。


腐海と人類の共生を探っていく中で、苦しみや悲劇は正常な世の中でもなくならない、それは人間の一部だからと。
だからこそ、苦界であっても、よろこびや輝きもあるのに、と続く。



「苦海」とは仏教では、苦しみの絶えないこの世の例えで使われるそうですが、そこに「浄土」をつけた石牟礼道子さんの祈りのようなものを感じました。


私にとっては、発酵に苦海の中の「浄土」を見出したのかもしれません。
そこにはいつも祈りと希望の想いがあります。


2018年10月、11月に石牟礼道子さんの原作で
という能が三公演行われます。
HPをご覧くださいませ。

「近代化が進む中で希薄になりつつあるいのちの深み、そして自然への畏敬の念。日本人が古くから大切にしてきたこの想いを次世代に繋げたい」



皆さまにとって光を感じられることがたくさんありますように*・゜゚・*:.。..。.. .。.:*・゜゚・*