ポートレート撮影術(基本編):Ch3-1 レンズの特性を知る | カイザーのブログ

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現在改訂中の拙著ポートレート撮影術(基本編)の
第三章からのご紹介。
モデルは青山紗也さん(
ブログ)(twitter)。

Ch3は「レンズの選択」を取り扱います。

本文に曰く、

ポートレート撮影では人物の良いところを引き出して
いくことにポイントがある。
その際に、カメラの設定とともにどのようなレンズを選
択し、人物のどのような良いところを引き出すのか、
撮影者の意図するところをどのように表現していくのか、
ということが重要な要素になる。」

という説明で始まる章ですが、Ch3-1は「レンズの特性
を知る」、Ch3-2は「画角の使い分け」の節になります。

まずはレンズの焦点距離に応じた背景範囲の変化と、
なによりも各焦点距離の持つ遠近感(パースペクティブ)
さらには人物のプロポーションの変化に注意して、以下
の写真をご覧になってください。


(1) 24mm
24mm
いわゆる広角レンズの代表24mm域です。

広角レンズの特性として、


・周囲を取り込んで、画面外との交渉・関係性の表現や動感、雰囲気を表現するのに良い。
・全身を取り込んでの動的印象を出せる。
・近接撮影が出来るので、表情を追うのによい。
・モデルの並べ方や置く場所で印象が変わる。
・中心部以外は拡大されるので、歪曲・拡大・強調を意識して用いる。
・モデルの顔を中心から外すことには要注意。出来るだけ真ん中に顔を置かないと歪んでしまう。


ということが、撮影術では説明されます。
この作例(1)でも基本に忠実にウェストレベルにカメラを
構えて変なパース(遠近感)をつけないように注意して
ますが、顔の歪曲度合いや脚の遠近感の過度なつき方など、
やはり24mm域でのポートレートは難しいですね。


(2) 35mm
35mm
いわゆる準広角と呼ばれる35mm域です。

カメラのフォーマットでは、フィルム面の対角線
の長さと同じ長さの焦点距離をもつレンズをもって、
標準レンズと呼称するのが伝統。

唯一これを破っているのが、135版といわれる35mm
フィルムサイズ・カメラ(普通の人が使うカメラ)。
対角線が43mmなのに対して、ライカ社(ライツ社)が
50mmをもって標準レンズと呼称したことから未だに
50mmレンズが標準レンズとされてます。

しかし、本来的な定義に基づくならば35mmも43mmに
近い焦点距離であり、ある意味準標準レンズと呼んでも
悪くはない焦点距離です。

撮影術での説明では、
・上半身像までに適する。アップも可能だが、少し歪み出る。
・被写界深度がとれ、ピント面の自由度が増すので、ある程度動いて撮れる。
・35mmレンズは、ひろがりのあるポートレート撮影が可能。

と説明しています。

作例(2)でも、(1)ほどの強いパースはなくなり、
奥行きと広がりを感じることが出来ると思われます。
ただし、やはりフルショットはちょっとつらいですかね。


(3) 50mm
50mm

ちょっと振り返ってみて、広角から標準域の見え方。

24mm35mm50mm


つづけて、中望遠レンズの焦点距離に移ります。
(4)70mm
70mm
紗也ちゃんの脚が明らかに長く感じませんか。

(5) 100mm
100mm

中望遠レンズについては、ポートレート撮影術では、

全身、上半身像を歪みなく撮れる。
・アップにも最適。絞り開放で撮るとボケが一段と美しくなる。
(ただし、描写が甘くなる)
・静的にとりやすい。APS-Cカメラでは1.5段ほどボケ味が異なる。
(ボケ効果が弱くなる)
・中望遠は歪みが少ない。できるだけモデルに寄り、背景と離れる
ことでモデルを浮かび上がらせるように撮ることができる。

と説明しています。一方で、圧縮効果が効いてきて、
作例(1)-(3)のような奥行きが感じられる画から、
(5)-(7)では背景が人物のすぐ後ろにあるように見えて
きます。



(6)135mm
135mm

また同時に、望遠レンズに該当する焦点域とも合わせて、
・少しの角度で背景をかえられる。
(よって、抜けの良い背景を選ぶことが重要。)
・明暗差のコントラストを活かした背景を用いることも重要。
・大口径レンズでなくとも前ボケは得られやすいので、背景
処理に困ったときには前ボケを積極的に使う。
と説明しています。

作例(4)と(6)を比較してみても、背景に写り込んでいる
範囲が大きく異なってきていることが分かります。


(7) 200mm
200mm

復習してみましょう。

(1)24mmと(7)200mm
24mm200mm
・写り込む範囲の差、
・背景の圧縮感・遠近感のつき方の差、
・人物の脚の長さの見え方
などなどについて、この実例を見比べて感じてもらえると
良いかと思います。


初級者は何よりも写る範囲の画角の部分に目がいって
しまい勝ちですが、そのレンズのもつ遠近感・圧縮効果
に目を向けるようにすれば、より格調高い写真が撮れる
ようになる、という説明です。

以上、各焦点距離ごとの画の描写の違いでした。

改訂作業中のポートレート撮影術(基本編)Ch3-1は
全面書き直しをしているところなので、出来上がりは
ここで紹介したものとは異なるものとなりましょうが、
本質は変わりません。

モデルは青山紗也さん。

撮影はEOS5D MarkIII,
EF24-70mmF2.8LII, EF70-200mmF2.8LISII
ロケ地:代々木公園


(ポートレート撮影術 I 基本編p19-p20)

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