先日、夜の川崎工場地帯を訪れた。

夜と言えども空気は重く、蒸し暑さに包まれて不快指数は高い。

しかし、眼前に広がる光の建造物群を眺めていると、まるでファイナルファンタジー7の世界に迷い込んだような感覚に陥った。

どこか現実離れした光景は、ゲームの記憶と重なり、不思議な高揚感を伴っていた。


 

翌朝、気分が良かったので久しぶりに珈琲を焙煎から始めることにした。

普段はネスプレッソに頼りきりだが、この日はコロンビア豆を17分30秒かけて焙煎し、さらに5分冷却。

次に手挽きで豆を挽く。

機械なら一瞬で終わる作業も、手作業ではまるで永遠に続くかのように時間がゆっくりと流れる。

サイフォンに井戸水を汲み、アルコールランプに火を灯し、20分弱……。

ようやく一杯の珈琲が完成する。焙煎から数えて一時間の工程。

ベートーヴェンが毎朝、珈琲豆60粒を数えて淹れたという逸話も思い出される。

たまにやる分には良い。

だが、日常となるとやはりボタン一つで淹れられる珈琲マシーンの便利さが恋しくなるのは否めない。

Bikeも同じで、BMW R1300GS Adventureのクラッチレス仕様に慣れてしまい、クラッチ操作を面倒に感じるのと似ている。

科学の進歩と共に人間が怠惰になるのも無理はない。

だからこそ、面倒なことに時間をかけることこそ最大の贅沢なのだろう。