三木屋は兵庫県豊岡市の城崎温泉にある創業300年の日本旅館で、「小説の神様」と呼ばれた文豪・志賀直哉の名作「城の崎にて」が生まれた場所として有名です。その3階建ての建屋は1927年に建てられ、国の有形文化財に登録されています。

志賀直哉は1913年、30歳の時に山手線に轢かれ大怪我を負った後の養生に城崎温泉を訪れ、三木屋に3週間逗留しました。その間に城崎温泉で目の当たりにした蜂、ネズミ、イモリの3つの生き物の死と、九死に一生を得た自分とを照らし合わせて「城の崎にて」を執筆しました。ここをとても気に入ったようで、その後も昭和30年代まで、志賀直哉はここに13回も足を運び、また、白樺派のメンバーや柳田國男などの文人、山下清、小磯良平といった画人など多くの文化人がここ三木屋を訪れています。

 最初の写真は城崎温泉街のメインストリート・湯の里通りに面した三木屋の玄関です。次の3枚はロビーの南側に広がる300坪の庭園を月見台から写したもので、周囲の大師山の自然を借景に取り込み、裏に流れる大谿川の流れを引き込んだ池を配しています。志賀直哉の小説「暗夜行路」に描かれたままの庭の姿を今も残しており、雪の多いこの時期、兼六園のように松に雪つりがなされていました。次は、城崎温泉の7つの外湯の内、三木屋の近くにある「御所の湯」で、京都御所を彷彿とさせる建物です。次はロープウェイで登った大師山から見た城崎温泉の全景です。今回、蟹料理を食べに宿泊しました。(2023年2/20撮影)