居初(いそめ)氏庭園は大津市堅田の琵琶湖畔にある日本庭園で、園内にある書院・天然図画亭(てんねんずえてい)から、天然図画亭庭園とも呼ばれています。堅田は古くから湖上交通の要衝であり、鎌倉・室町時代には、居初家は堅田の「殿原衆」三家の筆頭で、琵琶湖の水運を支配していました。安土桃山時代になると、豊臣秀吉が湖上の自由通行を認めたことから、堅田衆の勢力は一時衰退したものの、江戸時代には、居初家は舟運を取り仕切る権利が再び認められました。この居初氏庭園と天然図画亭は、1680年頃、千宗旦の弟子で宗旦四天王の筆頭である藤村庸軒によって作られました。藤村庸軒は表千家の流れを汲む庸軒流茶道の開祖です。庭園の作庭には庸軒の門人で堅田の郷士であった北村幽安も関わっており、1981年に国の名勝に指定されました。

  最初の写真は居初家の入口です。次は塀門で苔の中に飛石が配置されています。次は簡素な中門です。次は天然図画亭の外観です。これは茅葺入母屋造で、杮葺きの庇をめぐらせ、北面から東面にかけて幅の広い廻り縁を設けています。天然図画亭の名前は1799年天台僧・慈周によって命名されました。次の2枚はその内部で、中の間は4畳半、主室は8畳と1畳の点前座と炉を設けた茶室でもあります。次の3枚はこの書院の北から東にかけて広がる枯山水庭園です。自然石や切石を敷き並べ、松、ツツジなどを植栽し、松の周りに杉苔を配しています。次は庭の東側に見える琵琶湖の湖面と対岸の三上山の山並みで、これを借景としています。(2021年10/08撮影)