







並河家は、明治・大正時代に活躍した日本を代表する七宝作家であった並河靖之が自宅兼工房として造ったもので、2003年4月に並河靖之七宝記念館としてオープンしました。七宝とは金属製の下地の上に金、銀などの線をテープ状にして貼り付け、線の間に釉薬を乗せたものを高温で焼成・研磨することによって、融けた釉薬によるガラスあるいはエナメル様の美しい彩色を施すものです。ここの庭へ取り入れた琵琶湖疏水の水は、無鄰菴庭園のように園池のために引き込まれたものではなく、もともと七宝焼きの研磨用に引かれたものです。
最初の写真は、並河靖之の作品130点余りを所蔵する七宝記念館の表屋です。1894年に建てられたこの建物は、主屋・旧工房・旧窯場とともに国の有形文化財に指定されています。次は池が家の下に入りこんだ御殿造の主家です。次は現在七宝の作品が展示されている旧工房です。次の4枚は園池を中心として座敷前に広がる「主庭」で、主庭内には全部で12本の石燈篭、寺社の礎石風な踏分石など多くの石造品が配置されています。次は鞍馬石製の一文字手水鉢で、右下に置かれた2本の延石を組み合わせた沓脱石は膳所城で使用していたやぐら石といわれています。この庭園は隣同士で親しかった7代目小川治兵衛によって1894年に作庭されました。小川治兵衛が手がけた数ある庭の中で、ここは最初に疏水の水が導入された庭で、京都市の名勝に指定されています。(2008年11/07撮影)