






「百寺巡礼」の第78番は正伝寺です。1273年に東巌慧安が烏丸今出川に創建した正伝寺は、臨済宗南禅寺派の寺院で、正式名称は正伝護国禅寺です。比叡山の天台衆徒との争いで寺は焼かれたあと、1282年に賀茂社の祠官森経久が荘園を寄進して、現在地の西賀茂に再建されました。その後、後醍醐天皇の勅願所となり、1340年に十刹に加えられました。天皇の勅願所とは、勅命によって国家鎮護、玉体安穏を祈願した社寺のことで、正伝寺の本尊は釈迦牟尼仏です。
最初の2枚の写真は、山門とそこから方丈までの森の中の長い参道です。次の2枚は庫裏と鐘楼です。次は桃山時代に建立された方丈で、これは1653年に伏見城の殿舎を移築したものです。方丈内には狩野山楽が描いた淡彩山水図の襖絵があります。この方丈の広縁の血天井は伏見城の遺構で、徳川の武将達の霊を供養しています。最後の2枚は小堀遠州作と伝えられる方丈前の庭園で、比叡山を借景とした白砂の枯山水です。龍安寺の石庭が「虎の子渡し」と言われるのに対して、この庭は「獅子の児渡し」と名づけられ、石を使わずにサツキの刈り込みが七五三形式に配され、遠く比叡山を借景としています。また、ここは五山の送り火の船形で有名な西賀茂船山の麓に位置しています。この正伝寺の方丈前庭園は京都市の名勝に指定されています。(2007年9/09撮影)