登場人物
カイン……主人公。口数の少ない優男。元王宮兵士
ヤンガス……元盗賊。カインをアニキと呼ぶ
トロデ王……亡国の国王。呪いで魔物の姿にされている
ミーティア姫……トロデ王の娘。呪いで馬の姿にさせられている
トーポ……ネズミ
ドルマゲス……悪の魔法使い。トロデ王たちの呪いの主
マスター・ライラス……ドルマゲスの師。故人
ルイネロ……トラペッタの町の当たらない占い師。昔は高名だった
ユリマ……ルイネロの娘。父ルイネロを心配する
ある日、1件の火事が起きた。
そして、その火事で1人が死亡した。
被害者の名はマスター・ライラス。
トラペッタの町に住む賢者だった。
その前日、
被害者宅に入る道化師の姿が目撃されており、
この事件は、放火殺人事件であると、
町人たちは噂した。
一方、同じ日に、
トラペッタの町に魔物が入って来る、
という事件が起きた。
放火事件のこともあり、
神経質になった町人たちは、
「化け物!出ていけ!」
と、その魔物に石を投げた。
その光景を見た小太りで悪人顔の男が、
顔を青くして、
「アニキ!走るでがす!」
と叫ぶ。
そして、『小太り』と『アニキ』は、
魔物のもとへと駆け寄った。
『魔物』と『小太り』と『アニキ』は、
共に戦う仲間同士だった。
追い出されるように町を出た魔物は、
「人を見た目で判断するとは」
と、誰にともなく愚痴をこぼした。
『魔物』は、魔物と言っても二足歩行。
顔は緑色をしているが、人間の言葉を使う。
顔さえ隠せば、人間だと言い張れなくもない。
そういう容姿である。
『魔物』が魔物になったのには経緯がある。
もともとは一国の王であったのだが、
ドルマゲスという魔法使いに呪いをかけられ、
魔物の姿へと変えられてしまったのである。
その呪いを解くべく、
また、ドルマゲスの愚行を正すべく、
『魔物』は悪の魔法使いを追って、
ここトラペッタの町までやって来た、
というわけだった。
『魔物』は、
仲間たちには『トロデ王』と呼ばれている。
トロデ王は、
『アニキ』と『小太り』と『馬姫』と共に旅をしていた。
『アニキ』というのは、
元・王宮の下級兵士で、
名を『カイン』といった。
お気に入りの赤いバンダナを頭に巻き、
服のポケットに、小さなネズミを飼っている。
『トーポ』というのがネズミの名前だ。
友達はネズミだけ、ということはないが、
少しばかり無口な優男だ。
そんなカインを『アニキ』と呼ぶのは、
小太りの元盗賊、ヤンガスだ。
いかにも盗賊らしい悪人顔のヤンガスは、
その容姿も相まって、
カインよりもずっと年長に見える。
そんなヤンガスが、
優男のカインに対して『アニキ』と呼ぶことは、
他の仲間たちも違和感を感じているところだが、
本人が、どうしてもそう呼びたいと願い出ているのだから、
他の誰がそれを止めさせることもできない。
カインはトロデ王の部下であり、
ヤンガスはカインを『アニキ』と呼ぶが、
しかし、
ヤンガスが、アニキの上司に対して忠誠心を持つこともない。
トロデ王のことは『おっさん』と呼ぶのがヤンガス流だ。
そんなヤンガスは、
自分の名前が気に入っているのか、
会話の語尾に「がす」や「げす」が入る。
自己紹介するのであれば、
「ヤンガスでがす」
と言うことになる。
時が時なら、ガス会社の創立者になったことだろう。
トロデ王、カイン、トーポにヤンガス。
もうひとり忘れてはならぬのが、
『馬姫』ことミーティアだ。
ミーティアは、トロデ王のひとり娘で、
先日、
サザンビーク王国の王子との婚儀が決まったばかりだった。
そんな折に、
ドルマゲスの呪いの餌食となり、
馬の姿へと変えられてしまい、
今は、馬車を引く亡国のお姫様、という立場になっている。
白く美しい毛並みは、
呪われる前の容姿を反映させていると言える。
しかし、呪われた後も美貌を保つことができた代わりに、
ミーティアは人間の言葉を失った。
トロデ王とは違い、
ミーティア姫は、言葉を話すことができないのだ。
カインとヤンガス、
魔物になったトロデ王に馬の姿のミーティア姫、
そしてネズミのトーポ。
5人は……いや、4人と1匹は……いや、2人と3匹は……、
いやいや、2人と1体と1頭と1匹は、
そういう経緯を経て奇妙な旅の一座として、
悪の魔法使い、ドルマゲスを追って、
ここトラペッタまでやって来たのだった。
トラペッタには、
ドルマゲスの師である、
マスター・ライラスという賢者がいた。
であるから、
トロデ王たちは、
弟子のドルマゲスの動向を知るために、
ライラスを訪ねて、
トラペッタへと赴いたというわけである。
しかし、それもひと足遅く、
ライラスは、弟子のドルマゲスによって、
すでに帰らぬ人とされてしまっていた。
村人たちが目撃した道化師こそ、
ドルマゲスその人だったのだ。
トラペッタを訪れた目的は、
マスター・ライラスに会うことであったが、
それは叶わなかった。
しかし、逆に、
当のドルマゲスが、そこまで来ていたことがわかった。
町を追われたトロデ王だったが、
追われなくとも、町に居残る理由はなくなっている。
ドルマゲスを追っていく必要が、
トロデ王にはあった。
トロデ王一座はトラペッタに背を向けた。
さて、次なる旅は。
そう足を踏み出そうとした矢先に、
後ろから声をかけられる。
トロデが振り向くと、
若い娘が立っていた。
「あの!助けてください!」
と娘は言った。
聞くと、夢のお告げで、
「人でも魔物でもない者が訪れて、願いを叶えてくれる」
と言われたのだそうだった。
「しかし、ドルマゲスが」
トロデはそう言おうとも思ったが、
娘を見ると、ミーティアと同じほどの年齢に見える。
助けねばならない気にもなった。
とは言え、
王が受けた依頼は、
兵士が実行するのが通例。
結局、娘の頼み事を解決するのは、
カインの仕事となる。
娘は、ユリマと名乗った。
占い師ルイネロの娘だと言う。
かつて、ルイネロは高名な占い師だった、
とユリマは言った。
どんな探し物でも訪ね人でも、
ルイネロにわからないことはない、と。
しかし、ある日を境に、
ルイネロの占いは全く当たらなくなった。
その理由は、
水晶玉がただのガラス玉に変わってしまったせいだ、
とユリマは説明した。
当のルイネロは、
「わしは困ってはおらん!」
と言ってはいるが、
そうは言っても悩んでいるはずだ、
とユリマは言い、
「南にある滝の下の洞窟に水晶玉が眠るというお告げが!」
とカインに告げる。
このお告げが当たれば、
ユリマもまた素晴らしい占い師ということになる。
そうなれば、父親のルイネロはお役御免なのではないか。
しかし、その場合はルイネロの手に水晶玉が戻るのだから、
また高名な占い師としてのチカラを手に入れることができる。
そうすると、
どちらかというと、娘のユリマのほうがお役御免。
2人とも、お役御免になりたがっているようにさえ、
カインには思える。
ルイネロとユリマのお役御免の奪い合いに巻き込まれたカイン。
優男のカインには、
それを断ることはできない。
元兵士と元盗賊、元国王と元王女、
そして元……ネズミでない何か。
今となっては、ただの旅の一座である。
カイン:レベル1、トラペッタ
プレイ時間:58分
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目次
【1話:トラペッタ】
【3話:リーザス】
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