次なるは、リムルダールの地を目指す。
リムルダールは、マイラの村から海を隔てて南。
マイラ-リムルダール間は、船で航行することもできるのだが、
その航海は容易なものではない。
というのも、
アレフガルド中央部、魔の島付近の海は岩礁が多く波が荒れていて、
ほとんど航海ができない状態にある。
造船技術があるにもかかわらず、
ラダトーム城から、
目と鼻の先にあるゾーマ城に攻め込めないのには、
そうした理由があった。
マイラ-リムルダール間の海域は、
その魔の島の内海から外海へと海流が流れ出る海路となっていて、
少なからず魔の島の海の影響を受ける場所。
他方、
ラダトーム-マイラ間の海も、内海と外海を繋ぐ海路になっていて、
同じ理由で、多くの人にとって航行が難しい状況にある。
この事情を踏まえて、
より多くの人々が行き来できるように、
ラダトーム-マイラ間には橋を架ける計画が為され、
マイラ-リムルダール間においては、
すでにトンネル開通工事が着手されていて、
目下絶賛掘削作業中である。
さて、
この「アレフガルド全土を徒歩で回れるようにするぞ計画」のことなど知らないかいんであるが、
地味に不便な大陸配置をしたルビスに、
一言物申したいと思ったりもしていた。
人々が自発的に造船技術などを開発するためにこのような配置にした、
と理解することもできるが、
ルビスと対面したかいんの印象としては、
それほど深い考えを持っているようには思えなかった。
きっと、あまり先のことを考えずに世界を創っているに違いない、
と思うかいんだった。
世界は3つ作ってみないとわからない、などとも聞く。
ルビスは、創造神としてはまだ未熟なのかもしれない。
そんなことを考えている間に、
かいん一行は、湖に囲まれた町リムルダールに到着した。
この町での情報は、
かいんにとって重要なものばかりであった。
そう、
父オルテガは、この町にも来ていた。
傷ついてラダトームに辿り着き、
まだ傷が癒えぬまま城を発ち、
そして、ここリムルダールに来ていたのだ。
さらに、リムルダールの西のはずれから、
魔の島に向けて海へ飛び込んだ、との目撃証言が得られた。
何も知らない町の老人は、
哀れなオルテガは海の藻屑になったのだ、と言っていたが、
かいんは、オルテガの生命力が尋常ではないことを知っている。
火山に落ちても死なないほどだ。
もしかしたら、
バラモスにはらわたを食べられても死なないかもしれない。
いや、実際のところ、
本当に火山に落ちたのかどうかは結局わからなかった。
火山に落ちたというのが偽の情報だったのかもしれないし、
火山の火口にもアレフガルドへ通ずる穴があったのかもしれない。
しかし、途中経過はさておき、
ひとりでここまでやってきて、
ひとりでゾーマの城まで乗り込もうとしたのは事実のようである。
オルテガは、なぜそこから飛び込んだのだろう。
いや、飛び込んだことが不思議なのではない。
なぜラダトームから飛び込まなかったのかが、
かいんから見たら不思議である。
オルテガの性格からすると、
目の前に魔王の城があるのに、
それを海が阻んでいるからといって臆するとも思えない。
何か理由があるはずだ。
かいんは頭を巡らせた。
ラダトームから飛び込まずにリムルダールから飛び込んだ理由。
リムルダールからなら、
距離が短くて泳ぐのも簡単だと思ったのだろうか。
あるいは、リムルダールから陸続きであると思ったのだろうか。
考えられなくもない。
今まで考えなかったが、
オルテガが泳げない可能性もあるのだ。
もしそうだとしたら、
ラダトームから海に飛び込まなかったのは当然である。
そして、陸続きだと思ってリムルダールまで来て、
はじめて魔の島が他の大陸から完全に切り離されていることを知る。
確かに泳げないオルテガではあるが、
泳ぐしかないとわかれば、他に選択の余地もなく、
そして、その状況になれば、臆しないオルテガのこと、
海に飛び込んだのだ、とも考えられる。
つまり、ラダトームから飛び込まなかったのは、
他に道があると思っていたから。
リムルダールから飛び込んだのは、
他の道がないことがわかったから。
なるほど、考えられなくはない。
しかし、そうすると、
いかにオルテガといえども、
泳げないのに海に飛び込んだのであれば、
死をまぬがれることはできない。
そうか!
かいんは閃いた。
だから父はあれほどに軽装で旅に出たのか!
鎧兜があっては、
ただでさえ泳げないのに、浮かぶこともできず、
海という最大の敵に、無抵抗のまま沈んでしまうことになる。
そう考えると、
オルテガの旅立ちの姿が、
海に行く姿であったことに納得がいく。
オルテガは、魔物の強烈な攻撃を全く恐れていなかったのだ。
代わりに、海というものをとてつもなく恐れていたのだ。
生身で魔物の攻撃を受けても耐えるが、
鎧を着て海に落ちると絶える。
そういえば、リムルダールの宿屋に、
オルテガから預かった大切なものがあるという戦士がいた。
そして、その大切なものとは、命の指輪だった。
なぜ指輪を置いて行ったのか。
それは、指輪の重さでさえ、
浮き上がるのに差し支えるのだ、
と、オルテガが考えたのかもしれない。
泳げる者にとっては、
指輪の重さで人間が沈むことなどあり得ないとすぐにわかる。
しかし、泳げなければどうか。
指輪の重さで命を失う可能性を考えたとしても不思議ではない。
もちろん死を恐れているわけではないだろう。
しかし、死ねばアレフガルドを救えない。
そう思っているのは間違いない。
記憶があるのかないのかわからないから、
バラモスを倒せなかったことを悔いているのかどうかはわからない。
もしバラモスのことを悔いているとすれば、
より強い念でゾーマの城に向かったとも考えられる。
しかし、
泳げないのだとすれば、
早く追って助けに行ったほうがよいのではないか。
溺れる前に助けられるかもしれない。
そう考えたかいんは、
急いでリムルダール西の岸壁へと走った。
そこにオルテガはいなかったし、
そこからオルテガが見えることもなかった。
そして、
オルテガと違い、かいんはこの海に臆するので、
飛び込むこともできずにいた。
いや、他に手段がないとわかれば、
かいんだって飛び込むつもりでいた。
しかし、かいんには、
別の手段があることが薄々わかっている。
というのも、
「太陽と雨が合わさるときに虹ができる」と、
誰かが言っていたのを聞いたから。
今、手に太陽の石を持っている。
この石が「太陽」を指すのだとすれば、
「雨」を示す雨の石なんてものがあるのかもしれない。
虹ができれば虹を渡る、
というのは、少し話が飛躍している気もするが、
「太陽と雨」というのは重要なことであると直感している。
もしかしたら、オルテガもこのことを知っていたのかもしれない。
そして「虹」を探してここまで来たものの、
虹を見つけられずに、飛び込んだのだ、と考えてもよいだろう。
かいんには、勇猛なオルテガの、
もうひとつの特性に薄々気がついている。
それは、難解な謎は不得意で、
謎は解かずに、すべてのことを力技で解決しようとする性質。
例えば、オルテガは、
魔法の鍵を探してアッサラームからピラミッドに向かったという。
しかし、かいんが行ったとき、
まだ魔法の鍵は手つかずの状態で安置されていた。
オルテガにはピラミッドの謎が解けなかったのだ。
それに、
オルテガが目撃された場所は、すべて旅の扉や陸続きの場所。
アリアハンからノアニール、アッサラームにピラミッド、
そして最果てのムオル。
海外に行ったという痕跡は見つからなかった。
ネクロゴンドや火山に行くのも、
山さえ登れば、海を経由する必要もない。
苦手な海を進むことなく、苦手な謎を解くことなく、
力技でここまで来ている節がある。
そういえば、
体がゴムになったり、炎になったり、
トナカイがヒトになったりする代わりに、
泳ぐことができなくなってしまうような実がある、
なんて話も聞いたことがある。
その実を食べて、ひとつながりの財宝を探すとかなんとか。
「おばさん、僕は海賊にはならないよ。」と言ったにもかかわらず、
「海賊王におれはなる。」とか言ったのだとかどうとか。
よくわからない話ではあるが、
もしオルテガがそんなものを食べたのだとすれば、
あの強靭な肉体と海を避ける理由が、
説明できなくもない。
もっとも、謎の解明が苦手な点については、
生来のものだったのかもしれないのだが。
オルテガの危険をなんとなく感じているかいんは、
早く魔の島に渡る手段を見つけたいと思っているのだが、
リムルダールの老人が、
魔法の鍵を複製したいのでサンプルがあれば見せてほしい、
と言うので、
少し時間を取って、老人が鍵の型を作るのを待った。
今は貴重なものであるが、
もし大量に作ることができれば、
将来的には、安く販売することもできるのだろう。
もっと早く生産できるようになっていれば、
オルテガの旅ももう少し楽になっていたかもしれない。
もっとも、鍵などなくても、
オルテガの怪力の前には、施錠など無意味なのかもしれないが。
かいん(勇者・男):レベル39、HP325
いぶ(武闘家・女):レベル37、HP293
あだむ(賢者・男):レベル35、HP234
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