リムルダールの町はそこにあった。
やれぱふぱふ50ゴールドだとか、
やれ彼女と待ち合わせをしているいるとか、
待ち合わせの恋人は場所を間違えているとか、
その恋人が、ちゅん様遅いわ、ぷんぷんと怒っているとか、
この町は俗な事情にまみれていた。
けっ!有象無象の輩たちがっ!
かいんはいきなり毒づいた。
一方で、
ロトは西のはずれに虹をかけたのだとか、
南に聖なる祠があるのだとか、
重要な情報を教えてくれる者もいた。
しかし、かいんがそこに向かおうとすると、
恐ろしい魔物たちがかいんに襲い掛かる。
リカントのツメと牙はかいんに11ものダメージを与え、
かいんが逃げ出すのを4ターンも許さなかった。
赤いローブの魔道士は、
身構えるよりも速くラリホーを唱え、
かいんが眠っている間に3発ものギラを見舞った。
鉄のサソリなど、見るからに堅そうで、
かいんは、自分の銅の剣とサソリを見比べて、
何もせずにそそくさと逃げ出した。
くそっ!
魔物が強くてどこにも行けないじゃないか!
誰だ、西とか南とか言った奴は!
無駄な労力使わせやがって!
かいんはまた毒づいた。
一度到達したはいいが、
リムルダールの魔物たちに恐れをなしたかいんは、
結局、いま来た沼地の洞窟を戻って、
すごすごとマイラへと引き返そうとする。
しかし、
暗い洞窟、
行きと帰りでは、どうも勝手が違う。
かいんは、洞窟の中で迷って右往左往しているうちに、
ドラゴンに遭遇した。
たった今リカントの攻撃に脅えて逃げてきたばかりのかいんだが、
ドラゴンのツメと牙はリカントどころのものではなかった。
ドラゴンは1撃でかいんに35ものダメージを与え、
一方のかいんの剣は、
堅いドラゴンの鱗に阻まれて1のダメージも与えられない。
くそっ!
こんなところに不釣り合いに強い奴が出しゃばるんじゃねえ!
空気読め、バカ竜!
おまえなんかと誰が戦ってやるか!
かいんは一目散に逃げ出そうとしたが、
竜が吐く炎に追いつかれて、
結局炎上することとなった。
気がつくと、
かいんはラダトーム王の御前に膝をついていた。
「死んでしまうとは何事だ。」と王が言う。
バカ王!
俺に説教するんじゃねえ!
おまえが戦いやがれ!
気が収まらないかいんは、
いくつかの作戦を考えた。
剣が通じなくてもギラがある。
ツメが強力でもラリホーがある。
ギラ、ラリホー、ギラ、ラリホー、ギラリホー。
かいんはぶつぶつと言いながら、
沼地の洞窟へとまた踏み込んだ。
その途中、
マイラの村でさり気なく鉄の斧も買っていた。
作戦はギラリホーだけど一応ね、一応。
誰にともなくそう言って、
かいんはドラゴンとの2度目の対峙を迎えた。
死ね!ドラゴン!
と言って、かいんは出会い頭にラリホーを唱えた。
この斧を喰らえ!
と言って、かいんはギラを唱えた。
その首落としてやる!
と言って、またラリホーを唱えた。
この切れ味の餌食となれ!
と言って、2度目のギラを唱えた。
掛け声と呪文がちぐはぐなかいんであったが、
作戦自体は功を奏し、
ドラゴンはなかなか目を覚まさない。
それもそのはず。
勇気のない勇者のかいんは、
ドラゴンが目覚めるより前からラリホーを唱えている。
起きたら嫌だし。
ツメとか痛いし。
炎とか熱いし。
顔とか怖いし。
あれとかこれとか言いながら、
買い立ての斧の切れ味も試してみる。
銅の剣と違って1のダメージを与えた。
それ以降、かいんが斧を振るうことはなく、
ギラリホー、ギラリホーとなった。
かいんの声が洞窟内に響いて、
「ギラリホー!」というこだまが聞こえるのではないかと、
考えるほどの余裕がかいんにはあった。
結局ドラゴンは、最後まで目覚めなかった。
トドメだ!と言ってラリホーを唱え、
永遠に眠らせてやる!と言ってギラを唱えた。
その呪文でドラゴンは息を引き取り、
最後の掛け声だけが、
正しい意味として成立した。
しかし、なぜこんなところにドラゴンが?
と、考えを巡らせるかいん。
ガライの町での情報を思い出した。
ローラ姫をさらった魔物は東へと飛び立ち、
姫は洞窟の奥に閉じ込められた、と。
そうか!わかった!
ローラ姫をさらったのが、このドラゴンなのだ!
ということは!
かいんは、洞窟をさらに奥へと進んだ。
ローラ姫!
そう叫ぶかいんの声は、
無情にも魔法の扉によって阻まれた。
ガチャガチャとドアノブを回すも、
扉は開かない。
くそ!
ドラゴンのくせに施錠なんかすんじゃねえ!
そしてかいんは、
賢いドラゴンを「バカかっ!」と罵って扉を蹴り、
マイラ方面へと洞窟を抜けた。
洞窟を抜けると、
かいんを死へと誘う前に紫の景色が広がっていた。
毒の沼地。
ドラゴンとの戦いで、
HPもMPもなくなっていたかいんには、
もはやその沼を越える術が残っていなかった。
無念。
かいんは、じゃぶじゃぶと毒の沼へと入り、
ぶくぶくと沈んだ。
気がつくと、ラダトームの王の前にいた。
目覚めたかいんに王が言う。
「死んでしまうとは何事だ。」
かいんの持つ斧がギラリと光ったと言う。
かいん:レベル8
鉄の斧、鎖帷子、皮の盾
どさおぞで よべつににごね ふみやりぐ さねわ
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