それは、敵に背中を見せないこと。
敵に背後を取られることは決して許されない。
敵から逃げるときも、決して背中は見せない。
目を合わせたままゆっくりと下がって距離を取り、
そしてさっと岩場に身を隠す。
こうすれば、
魔物には、相手が突然消えたように見え、
追っては来ないのだという。
別にそれを実践しているというわけではないのだが、
かいんは幼少の頃から、他人に背中を見せたことはない。
魔物にも。町人にも。誰にも。
あまりにも徹底しすぎているため、
あいつには背中が無いのだ、とか、
あいつは両面がお腹なのだ、と揶揄されているほどである。
背中を見せないかいんに、
最初に襲い掛かってきたのはスライムベス。
棍棒を振りかざして、
かいんははじめて魔物を倒し、
1ポイントの経験値と2ゴールドを得た。
背中を見せないわりに、
身構えるのは言うほど速くないかいん。
というより、むしろ遅い。
魔物は、いつも、
かいんが身構えるより速く襲い掛かってくる。
3匹目のスライムベスを倒したときには、
もう瀕死になっていた。
かいんが宿屋に駆け込むと、
1泊が6ゴールドだと主人は言う。
なんということだ!
死に物狂いで稼いだお金が、
すべで宿代に消えてしまうとは!
高けーんだよ!このぼったくり宿屋がっ!
翌朝、かいんは親指を下に向けながら宿を出た。
ラダトームの北西の砂漠には、洞窟があった。
そして、その洞窟には石板が安置されていた。
石板にはこう書かれている。
「私の名はロト。私の血を引きし者よ。ラダトームから見える魔の島に渡るには3つのものが必要だった。私はそれらを集め、魔の島に渡り魔王を倒した。そして今その3つの神秘なる物を3人の賢者に託す。彼らの子孫がそれらを守ってゆくだろう。再び魔の島に悪が蘇ったとき、それらを集め戦うがよい。」
勇者ロトが魔の島に渡るのに使った3つの神秘なる物。
かいんは、その3種の神器に心当たりがある。
ロトの末裔の家系には伝承が残っているのだ。
魔の島に渡るための装備、
それは、覆面マスクと海パンとマントだ。
勇者ロトが魔の島に渡るのに持っていたものは、
その3つだけだったと聞いたことがある。
しかし、ロトはそうであったようだが、
魔の島に渡る方法はそれだけではない。
ロトの息子も、魔の島へと渡っている。
そして、ロトの息子が持っていたものは、
虹の雫、命の指輪、父親への敬意。
いや、勇気、仲間、力?
それとも、金、名誉、地位?
剣、勾玉、鏡?
テレビ、冷蔵庫、洗濯機?
パソコン、デジカメ、携帯電話?
WiFi、スマホ、タブレット?
よくわからなくなってきた。
よくわからなくなってきたが、これだけははっきりしている。
かいんは、そのどれひとつ持っていない。
そう、勇気さえも。
勇気のないかいんは、
北西にガライの町がある、とラダトームで聞いたのに、
なかなか進めずにいた。
強い敵に阻まれたわけではない。
強い敵がいそうで怖いから進んでいないのだ。
ところが、
ギラを覚えた瞬間、
かいんは急に強気になった。
かいんのギラのもとに、
ゴーストや魔法使いなどは、1撃で炎上した。
ハッ!魔法使いが勇者に敵うものか!バカめ!
倒せるとわかるや否や、魔物たちを罵倒するかいん。
勇気がなくとも、勇者であることができるようである。
ガライの町の始祖は、
偉大な吟遊詩人であったと言われている。
その昔、ここに町はなく、
ガライという吟遊詩人が住む家だけがあったという。
魔物のはびこるなか家を出て、
アレフガルドの平和とともに戻ってきたガライを
多くの人が支持した。
ガライが世界を救ったのだ。
そういう声も聞かれた。
そして英雄となったガライの周りに人が集まり、
それが今日のガライの町の礎となったと言われている。
ガライの町では重要な情報が聞けた。
ローラ姫をさらった魔物は東のほうに飛び去った、と。
姫は洞窟に閉じ込められている、と。
俺はミヤ王だがキム皇を探している、と。
なるほど。
ローラ姫は東か。
ガライの町を出たかいんは東を目指した。
3種の神器、覆面マスクを探して。
かいん:レベル5
こんぼう、ぬののふく、かわのたて
るるもずぢ げぢさそそぎう きさそてぬ じぼと
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