ドラクエ3冒険日記(20) | カインの冒険日記

カインの冒険日記

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かいんがシルバーオーブを不死鳥の台座に捧げると、
エルフたちは、せーの、と言いながら呼吸を合わせて話し出した。
「私たち」「私たち」
「この日をどんなに」「この日をどんなに」
「待ち望んでいたことでしょう」「待ち望んでいたことでしょう」
よく揃っている。
練習していたのか、とかいんは思った。
「さあ祈りましょう、時は来たれり」「さあ祈りましょう」「今こそ目覚めるとき」「時は来たれり」「大空はお前のもの」「今こそ目覚めるとき」「空高く舞い上がれ」「大空はお前のもの」
だんだん声がずれて、
何を言っているのかわからなくなってきた。
練習の途中だったのか、とかいんは思った。
「空高く舞い上がれ」
まだ終わってなかったのか、とかいんは思った。

なかば偽物だと決めつけていたシルバーオーブだったが、
エルフの声と呼応して、タマゴが孵り不死鳥が飛び出したので、
オーブは本物であったのだと、
今頃になってわかったかいん。
と、いうことは、
老人は、実はオルテガほどに強い説が正しいのかもしれない、
と、かいんは考えた。
いや待て、
老人がバラモスの手先だというのは事実で、
このオーブが本物だというのも事実で、
早くバラモスに殺されてしまうように、
老人はオーブをくれたのかもしれない。
いやいや、
だとしたら、
そんな面倒なことをせずに、
もっと早い段階で、
そう、アリアハンに大軍でもって襲いかかればよかったではないか。
もしかして、
その時点では、ここまでの事態を想定できなかったのか。
確かに、それはそうだろう。
いくらオルテガの子であるとはいえ、
オーブを5つ集めて、
ここまでバラモスに迫ろうとは、
思いもよらぬことであったはずである。
しかし、
だからといって6個目のオーブをホイホイ渡していいものなのか。
「もしもしバラモス様、私ですが。勇者一行がお見えになっておりますので、こちらにお越しになって倒していただけませんか。」
と、連絡の1本もすればよいのではないのか。
いや、しかし。
連絡が来たとしても、バラモスが果たして動くのだろうか。
最も自分が戦いやすいように城にいるのに、
その地の利を捨てて、のこのこ遠征するはずもない。
「もしもし、わしだ、バラモスだ。わしは自分の城で戦いたいのだ。オーブを渡して勇者どもをここへ来させるように誘導しておけ。」
とでも言ったのかもしれない。
しかし、バラモスが自分で行かないからといって、
バラモス城まで勇者を呼び込んでいいのか。
「ではバラモス様。勇者一行はこちらのほうで始末しておきますので、エビルマージと動く石像とホロゴーストと地獄の騎士とスノードラゴンとライオンヘッドを送り込んでもらえますか?いえ、はぐれメタルと踊る宝石は結構ですので。」
などと老人が言えばいいのではないのか。
しかし、もしかすると、最終的には、
「バカ者。わしが勇者を倒すのだ。わしは人間のはらわたを喰らい尽くすのが好きなのだ。食事の邪魔をするでない。」
と、一喝されてしまったのかもしれない。
それとも。あるいは。
などと、かいんが頭上で想像のモクモク雲を広げていると、
エルフたちが咳払いをして、かいんを正気に戻させてくれた。
オーブが本物だったとわかって、
謎が謎を呼び、周りが見えなくなっていたかいんだった。

さて、では不死鳥に乗ろうか、
と、かいんが近寄ると、
神のしもべであるラーミアには心正しき者だけが乗れます、
というようなことをエルフたちが言う。
かいんは、ビクリとして、
急にラーミアに乗るのに及び腰になった。
あのさ、と、かいんが言い出した。
もしね、もし仮にね、僕が乗れなかったとしたら、
それって、シルバーオーブがニセモノだってことになると思うんだ。
そうなると、やっぱりあの老人がバラモスの手下だったってことで、
もう1回ネクロゴンドを越えて、
あの老人を倒しに行かないといけないんだと思うんだよね。
回りくどい言い訳を聞き終わったあだむに、
首根っこを掴まれてラーミアの背中に放り投げられたかいん。
手足をバタバタさせながら、わー、と喚いていたのに、
急に正気に戻って、真面目な顔になった。
ほらね、心正しいから乗れるんだよ、僕は。
シルバーオーブが本物だから不死鳥も本物。
僕が心正しき者だというのも本当。
さっきと言っていることが全然違っていた。
シルバーオーブが偽物であったならば、
心が正しいというのも嘘であることになって困る、
とでも思っているようである。

さて、
何はともあれ、オーブが本物だったのは確かだったわけで、
ネクロゴンドの老人のところにもう一度足を運び、
お礼を言いに行くかいん。
「そなたならきっと魔王バラモスを倒してくれるであろう」
と、老人は言っていた。
あまりに近場にいすぎて、
単にバラモスに気付かれていないだけかもしれない、
と、至極もっともな可能性に辿り着くかいんであった。


遂に不死鳥の背に乗りバラモス城に辿り着いたかいん。
宿命の魔王との対峙の瞬間を迎えた。
「ついにここまで来たか。この大魔王バラモス様に逆らおうなど身の程をわきまえぬ者たちじゃ。ここに来たことを悔やむがよい。もはや再び生き返らぬようはらわたを喰らい尽くしてくれるわっ!」
どうやら、バラモスは、不思議なことに、
再び生き返るのを前提として考えているようであった。
そして、はらわたを喰らい尽くせば生き返らないと、
そう考えているようであった。
そしてバラモスはかいんのはらわたを喰らい尽くした。
これで、もう勇者は生き返らないのだと、
安心して世界を手中に収める手はずを整えようと考えた。
ところが、
しばらくすると、
何食わぬ顔をして、またかいんがやってきた。
バラモスは焦った。
はらわたを喰らったのに生き返るとは。
わしがはらわたを食う顔をしているのに、
奴は何も食わぬ顔。
「もはや再び生き返らぬようはらわたを喰らい尽くしてくれるわっ!」
バラモスは確認するようにもう一度そう言って、
またかいんのはらわたを喰らった。
ところが、喰らっても喰らっても、
しばらくするとかいんがやってきて、
バラモスは、
世界を手中に収める手はずどころではないほど忙しくなった。
くそ!
いったいどうしたら再び生き返らなくなるのだ!
はらわたでは駄目なのか!
これでは、いつの日か、わしがやられてしまうではないか!
バラモスがそう思う矢先に、またかいんが現れ、
いきなりラリホーを唱えた。
はらわたを喰らいすぎて満腹で眠くなっていたバラモスは、
うっかりうたた寝をしてしまった。
起きたとき、バラモスは、
戦局がガラリと変わってしまっていることに気付いた。
勇者たちがはぐれメタルのように素早くやっていて、
全く先手が取れず、トドメが刺せない。
寝ている間にピオリムを使われたのだと気付いた。
勇者たちの攻撃が動く石像のように重くなっている。
寝ている間にバイキルトを使われたのだと気付いた。
そして、いつの間にか、回復力がエビルマージ並みになっている。
ベホマを覚えていたことに、遅ればせながら気付いた。
なるほど、無念である。
無念であるが、大好きなはらわたはたらふく食べた。
毎日新鮮なはらわたを運んできてくれた勇者たちに感謝して、
わしは息を引き取ることにしよう。
そしてバラモスは絶命した。

何度もはらわたを喰らわれたかいんは、
無事めでたく、とは言えないにせよ、
無事ではなく、めでたく、
バラモスを退治してアリアハンへと凱旋する。
人の噂は早いもので、
かいんがバラモスを倒したという話は、
かいんのルーラの速度よりも速く伝わっていた。
もっとも、夜飛び始めて朝に到着するルーラが、
それほど速いとも言い切れない部分はあるのだが。

かいんはアリアハン王に報告に向かう。
ところが、
さて宴だ、という段になって、
闇の雷が王の間に降り注ぎ、
不幸な兵士たちが落雷の餌食になり息絶えた。
そして、王の間に不気味な声が響いた。
声の主と落雷の主は同一であるようであり、
その主は大魔王ゾーマと名乗った。
闇の世界を支配しているから、こっちの世界も支配してやるぞ、
というような目標を宣言し、
苦しんでいるの見るのが好きだからいっぱい苦しんでね、
というような趣味を暴露した。
苦しんでいるのを見るのが好きだとは、なんと趣味が悪いのだ、
と、かいんは一瞬考えたが、
はらわたが好きなバラモスの趣味も悪かったような気がして、
魔族の趣味は平均してそんな感じなのだ、
と、ひとり納得するのだった。

王様に依頼されたのはバラモス退治。
バラモスを倒した今、僕はどうすべきなのだろう。
その判断は、王様にしてもらうべきだろうか。
などと考えながらアリアハン王を見たところ、
ショックのあまり、
まるで、インターバルが終わっても椅子に座ったままセコンドの前から動けなくなったボクシング選手のように真っ白になってしまっていたので、
かいんたちは早々に城を出て町を出た。

さて、これからどうするんだ、かいん?
大魔王ゾーマを探そう。僕たちがゾーマを倒すんだ。
でも、大魔王ってどこにいるのかしら。
それはわからないけど、ひとつだけわかったことがある。
それはなんだ、かいん?
自分で「大魔王バラモス様」って言ったけど、バラモスって大魔王じゃないじゃん。
3人は深く頷いて、ラーミアの背中に乗った。



かいん(勇者・男):レベル35、HP281
いぶ(武闘家・女):レベル32、HP245
あだむ(賢者・男):レベル31、HP202





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