かいん、いぶ、あだむの3人は、
サイモンの救出を目指す。
はじめは、勝手にオーブ争奪戦のライバルだと思っていたのだが、
どうやら、サイモンのほうは、
オーブを集められる状況ではなさそうなことが、
だんだんわかってきていた。
急ぎサイモンを探さなければならない。
サイモンの行き先は、と言うと、
サマンオサの旅の扉から追放されたという話を前に聞いた。
旅の扉の先はオリビアの岬の祠であるので、
この祠の近くに幽閉されているのかもしれない。
そう思って岬から内海を見渡すと、
ひとつの小島が浮かんでいて、そこに祠のようなものが見える。
かいんたちは、その小島が怪しいと睨んだ。
とは言え、
なにぶん内海であるので、
簡単に船で行くこともできなさそうである。
内海に繋がる海路を探さなければならない。
かいんは、頭の中の世界地図を広げた。
ここオリビアの岬はアッサラームから山を越えた北にある。
ここから北西は 橋はあれどノアニールまでずっと陸続き。
東の方も、ムオルまでは陸続き。
だからかいんは、
ノアニールからムオルまで船を使わずに移動することができた。
つまり、その間には、内海へ通ずる海路がないことを意味する。
そうすると、ムオルよりさらに北から回り込むか、
ノアニールからずっと東側に進んで海路を探すか、
ということになる。
東のムオルか、西のノアニールか。
かいんは、いぶとあだむと顔を合わせた。
「せーの!」
かいんといぶが東を指差し、
あだむだけが西を指差した。
そう、もうあべるはいない。
だから多数決が引き分けることもない。
かいんは、希望が叶ったのに、寂しい気分になった。
あべるは元気にしているだろうか。
あべるは、日々精進し、
町を大きくする努力をしていた。
最初は小さな道具屋を作っただけだったが、
買い物をする旅人も増えてきていた。
夜になって閉店し、
あべるは、自室で日記を書いた。
○月×日
商売は順調。
道具屋として取り扱う品も増え、
宿屋の建築にも着手できた。
それもこれも、かいんさんたち仲間のおかげ。
かいんさんは元気にしているだろうか。
ムオルの東側から大陸沿いに北へ進むかいん。
オリビアの岬に辿り着く前に、
大陸北端の祠で、旅の戦士と会った。
旅の戦士は、オルテガとともに冒険をしていたと言った。
ずっとオルテガはひとり旅だと思っていたかいんは、
父の仲間だという戦士の発言をいぶかしむ。
アリアハン王も、他の誰も、
オルテガに仲間がいたことを知らなかった。
しかも、この戦士は、
仲間であったにもかかわらず、
オルテガの最期を見ていないのだと言う。
どうにも胡散臭い話ではあるが、
しかし、これが嘘だとすると、
そんな嘘をついて誰が得をするのか、かいんにはわからない。
誰も得をしないのなら、
そんな嘘をつく必要はないことになり、
つまり、この発言は嘘ではないのだろうと、
そういうようにも考えられる。
今、かいんたちは3人パーティー。
オルテガの仲間だった戦士は1人。
協力してパーティーを組むことはできる。
しかし、
かいんは仲間を増やす気はなかった。
4人目の仲間はあべると決まっている。
バラモスを倒した暁には、
3人であべるの町へ行き、
4人揃って祝杯を上げる。
僕らの旅は4人で始まり4人で終わる。
だから、4人目の席は、あべるのために残しておく。
いや、残しておく、と表現するのは少し違う。
今、現在、この時点においても、
あべるは仲間であるのである。
僕らは3人パーティーではないのだ。
今なお4人パーティーを組んでいる最中なのだ。
この旅の戦士の話は確かに信憑性に欠けるけど、
それが理由でパーティを組まないわけではない。
この戦士だって、きっと最後まで父さんの仲間でありたいはずだ。
僕らの進む道は違うんだ。
そう心でつぶやき、
かいんは祠を後にした。
大陸北端の祠を出たかいんは、
細い海路を見つけて、オリビアの岬に到達していた。
ところが、
もう少しで祠のある小島に辿り着けると思ったときに、
オリビアの呪いが降りかかった。
船が強い力で押し戻され、どうしても進むことができない。
かいんは、旅の詩人の話を思い出した。
恋人のエリックを乗せた船が嵐で沈み、
オリビアは海に身を投げたのだが、
死に切れずに岬を通るものに災いをもたらす、のだとか。
恋人のエリックの乗った船もまた、
幽霊船として、海をさまよっている、のだとか。
エリック。
幽霊船。
船乗り。
船乗りのホネ!
かいんは、突然ひらめいたように、
道具袋から糸付きのホネを取り出した。
変化の杖の代わりに、ツンドラ島の老人にもらったホネだった。
糸をつまんで持ち上げると、
ぶら下がったホネがぐるぐると回ってある方向を示した。
なるほど。
この方向に何かがある。
かいんはそう直感し、ホネが示す場所へと向かう。
半ば予想した通り、
ホネが指し示す先には、幽霊船が漂っていた。
船に乗り込むと、中はガイコツばかり。
当然と言えば当然である。幽霊船なのだから。
船を漕ぐのは罪人か奴隷と相場が決まっている。
そんな罪人や奴隷のガイコツにまぎれて、エリックはいた。
彼は無実の罪でこの船に乗せられたのだ、
と、隣りのガイコツが教えてくれた。
エリックは、もう会うことができない恋人の身を案じていた。
かいんは、このエリックの気持ちを
岬のオリビアに伝えることはできないかと考えた。
そう考えている矢先に、ひとつの宝箱を見つけた。
中にあったのはペンダント。
ペンダントを開くと、
岬でほほ笑む1組のカップルの写真。
エリックとオリビアなのだと、すぐにわかった。
このペンダントは2人の愛の思い出なのだ。
かいんはペンダントを強く握ったまま、
幽霊船を後にして、オリビアの岬に戻った。
「エリック!」「オリビア!」
愛を思い出した2人は安らかに成仏し、
そして岬の呪いは解かれた。
穏やかになった海を越えて、かいんは小島の祠に足を踏み入れる。
祠の中は牢獄になっていて、
牢のベッドの上にはサイモンの屍があった。
なぜ屍がサイモンだとわかるのか。
それは、隣りの牢でサイモンの魂がそう教えてくれたから。
もっとも、
教えてくれなくても、
ベッドの下にひと振りの剣が落ちていたので、
これが非常に特殊な状況であることは一目瞭然だった。
牢に入れられるときに普通の囚人が帯刀を許されるはずもなく、
ただの罪人ではないことがすぐにわかる。
そうなると、追放されたサイモンだと思うのが当然で、
サイモンの持つこの剣はガイアの剣なのだと、
深く考えなくてもわかることである。
大人しく牢に入ったサイモンも、
剣を奪われることには抵抗したのだろう。
サイモンに本気で脱獄されると困るので帯刀だけは許した、
というやむにやまれぬ事情があったのかもしれない。
あだむがふと見ると、かいんが屍に手を合わせている。
手を合わせながらぶつぶつ言っていたので、
あだむがそっと耳を寄せてみたら、
サイモン、この勝負は2-0で僕の完封勝ちだ、
というようなことを言っていた。
さて、
サイモンの遺体を確認して、遺品を持って、
かいんはサマンオサへと飛んだ。
サイモンの息子に、このことを伝えなければならない。
と、思ったかいんだが、
遺品であるガイアの剣を渡すわけにはいかないわけで、
やっぱり息子の方は放っておいて、
次のオーブを探しに行くか、と考え直した。
サイモンが帰らぬ人とわかって、
自分でバラモスを倒すしかないと悟ったかいんであった。
かいん(勇者・男):レベル27、HP212
いぶ(武闘家・女):レベル22、HP184
あだむ(賢者・男):レベル21、HP141
オーブ:パープル、グリーン

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