ドラクエ5冒険日記(36)エンディング | カインの冒険日記

カインの冒険日記

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「ワシは魔界の王にして王の中の王。」
ミルドラースはカインに会うなり、そう言った。
これは、ミルドラースの決めゼリフであり、
別段、カインがグランバニア王であることを
意識してのことではなかった。

一方で、デボラは、
このミルドラースの発言を不快に思っていた。
王の中の王はカインであってもらわねば困る。
王の中の王であるカインが自分のしもべであるという事実が、
デボラには重要であった。

カインは、母を助けるために魔界へと入った。
ことさら、世界を救うためとか、
平和を取り戻すためとか、
そんな大仰な目的を掲げているわけではなかった。
しかし、勇者カミュに与えられた使命を考えると、
その勇者を探していたパパスの熱意を考えると、
カインは、ミルドラースを倒さなければならないことを悟る。
ミルドラースがマーサの命を奪ったことを思うと、
マーサが命を賭けて魔界の王を封じようとしていたことを思うと、
カインは、ミルドラースを倒さなければならない結論へと辿り着く。

憎しみのため、平和のため、運命のため、使命のため、
カインは、魔界の王ミルドラースに杖を向ける。
まるで、杖の先端のドラゴンが具現化し、
ミルドラースと睨み合う姿が、見えるようだった。

戦いの最中、ミルドラースは言う。
なまじ強いばかりに、本当の恐怖を味わうことになるとは、と。
そして、自らの姿をも、巨竜へと変化させる。
それが、邪悪な心を持ち、魔物へと生まれ変わったミルドラースの、
真の姿だった。

カインは長期戦を強いられた。
長い戦いの間に、サンチョが、ゴレムスが倒れ、
そして、ついに勇者カミュが力尽きる。

ミルドラースは、勇者を仕留め、
予言を的中させたとばかりに雄叫びを上げた。
しかし、この心の隙をピエールは見逃さなかった。
ピエールの剣が、ミルドラースを貫く。
ミルドラースは、一瞬の油断を悔いた。
注視するべきは、勇者だけではなかったか。と。

「ワシは魔界の王にして王の中の王・・・。」
崩れ落ちながら、ミルドラースはもう一度繰り返した。
哀れな魔界の王の最期だった。


ミルドラースを倒し、
魔界からの侵略の恐怖から世界を守ったカイン。
カインは今、天空城に来ていた。
天空城に来る理由はあまりないのではあるが、
マスタードラゴンが、
懐かしの友たちのところへと連れて行ってくれるらしく、
これといって断る理由もなかった。

カインは、ラインハットへと赴き、
ヘンリーとがっちりと握手をする。
奴隷だったあの10年が懐かしい思い出だった。

サラボナへ行き、ルドマンに挨拶をする。
こうして、無事に帰ってくることを
ルドマンは予想していたのだろうか、
とカインは思わずにいられない。
魔界に行くときに挨拶に来たばかりだったが、
ルドマンは、魔界に関する心配を全くしていなかったようなので。

アンディとフローラにも無事を報告する。
アンディも、今となってはカインの義理の弟。
無事を報告するのは当然のこと。

もちろん、ビアンカにも会いに行く。
ヘンリーと並ぶ親友であるビアンカに、
カインが会いに行くのは当然であるし、
ビアンカは、デボラの挙式準備を手伝った仲でもある。
子供心の大冒険を
カインは今でも大事な思い出として心にしまっていた。


さて、満を持してグランバニアに凱旋するカイン。
グランバニアの民は、王の帰りを今か今かと待ちかねていた。
こんなに待ったのだから、もう少しだけ待ってみよう。
これがグランバニアのキャッチフレーズだった。
王が不在でも、グランバニアが国として体を為してきたのは、
ひとえに国民の理解の産物であった。
グランバニアの民に、
自国のことだけを考えている者などいなかった。
すべての民は、世界のことを考え、天空のことを考え、
王のことを考え、支え、愛し、敬い、信じ続けることで、
今このときを迎えることができたと言える。
そんな民たちに、カインは感謝してもしきれなかった。
理解ある民に、カインは頭が上がらなかった。
信じる力の強さをカインは彼らから学んでいた。
カインは、自分がグランバニア人であることを心底誇りに思った。
自分がグランバニア生まれであったから、
グランバニアの人々が自分に協力的であったから、
魔界の王ミルドラースさえも倒すことができたのだと、
そう信じていた。
そう、これは自分の力だけじゃなく、勇者の力だけじゃなく、
グランバニアの力なのだと、カインは強く思った。


オジロンは、王座の間で、カインを待っていた。
グランバニアの民同様、オジロンもまた、
国王不在のグランバニアを長らく支えた貢献者のひとり。
オジロンは、カインを見るなり涙した。
よく帰ってきてくれた。
よく無事でいてくれた。
よく偉業を成し遂げてくれた。
魔界へ行くことに反対していたオジロンだからこそ、
今、カインが無事に帰ってきたことに、
心から安堵して、その安堵から涙を流すのだった。

オジロンは、民を玉座の間へと招き入れ、
民は、喜びの踊りを踊った。
カイン王は、それを見て、デボラの手を引く。
僕らも踊ろう。

カインは、ひとつ心残りがあった。
それは、結婚式で誓いの口付けを拒んだことだった。
思えば、デボラには悪いことをした。
確かにあのときは、
まだよくわからないデボラに愛情を持てないでいた。
だけど、今は違う。
僕たちは、困難を乗り越え、子を授かり、ともに歩き、
ここまで辿り着いたんだ。
踊りながらカインはデボラにそっと囁く。
これから一生かけて君を幸せにするからね。
カインはデボラの目をじっと見つめた。
何を当たり前のことを、と、デボラは一笑しようとした。
が、カインの真剣な表情に、デボラは笑わなかった。
デボラもまた、じっとカインの目を見つめ、そして目を閉じた。


「見てください、あなた。」
「ああ、見ているとも。」
「私たちの子が、こんなに立派になって。」
「カインは私たちが成し遂げられなかった夢を叶えてくれた。私たちも踊ろうじゃないか。さあ。」
「はい、あなた。」


グランバニアの民は、カインとデボラの誓いに拍手喝采を浴びせ、
カミュとクレアは恥ずかしがって両手で目を覆った。
10年の歳月を経て、ここに真の夫婦が誕生したのだった。


カイン:レベル36、プレイ時間27時間20分
パーティー:カイン、カミュ、クレア、デボラ、サンチョ、ピエール、ベホマン、ゴレムス





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